〜第一章〜 海 【歌い手】 2

【61】居酒屋 ページ11

A side


その後、片付けをし慌てて乗り込んだ新幹線。
そしてたどり着いたのは歌い手さん行きつけの居酒屋だった。

小さい頃の思い出が蘇る。お父さんが居酒屋が好きで
横に座って枝豆とか、ホタルイカの沖漬けを食べていた。

今考えればホタルイカの沖漬け食ってる五歳児って…


「ピースくーん何食べる？」

「好きなもん頼め！！」


米津さんにメニューを手渡される。
メニューには大好きなおつまみとおつまみとおつまみと…



「目がきらっきらしてるwwww」

「小さい頃からおつまみ大好きやったなぁ 」


みんな、来る途中に缶ビール飲んだりして
ほろ酔いの中の打ち上げ開始。

酔っ払った大人の人と話す時、
いい事が聞けたりする。


「A決まった？」


96猫さんがメモを片手に横に座る。

真面目というか、なんというか
働き者で、お姉ちゃんって感じの雰囲気ではあったけど、


『96猫さんっていい奥さんになりそうですよね』

「子供がなにいっとるんやww」


笑いながらも96さんが僕の頭をクシャクシャに撫でる
96さんは少し照れているのか、頬が赤い。

結果僕は、ホタルイカの沖漬けと枝豆。

お好み焼きをするらしく、こんなもんでいいかなぁと、あとはお茶を頼む。


渋いな！！と賢人さんにつっこまれながらも
ホタルイカの沖漬けだけは譲れないのだ。


この居酒屋、柱とか、椅子とか机がとても貫禄があり、かっこいい、

オレンジ色のライトに染まる木製の家具。
そして暖簾や提灯が漫画で出てくるようなもので、凄くいい雰囲気だ。

僕は鞄からカメラを取りだし、店長さんに許可を貰い、
写真を撮る。

先輩達の笑顔をこっそりと。


「何撮ってるん」


ちらーとカメラを覗き込む志麻さん。


『オフショットです』

「よし、それ後で送ってくれ」


この会話を発端に連絡先を交換していたら、
たくさんの人と結果繋がった。


｢それでは！｣


キリのいいところで天月さんから声がかかる。

｢本当に今日はありがとうございました！そして、お疲れさまでした！たくさんの人に支えられて出来たステージです。これからも末永く、よろしくお願いします！

かんぱーい！！」


みんなのグラスが触れる音が響く。
スタッフさんに天月さん。そして、ライブを見に来てくれた歌い手の皆さん。


｢Aも本当にお疲れ様｣

『いやいや、天月さんこそ今日はお疲れ様です』


仕事終わりの打ち上げ。
あぁ、いいもんだなって。飲んだ烏龍茶が体に染み渡った。

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