22.今だけは ページ22
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Aはミンホと共に、元来た道を戻っていた。
そろそろ日が昇る。
という事は、またメイズの道が開くという事だ。
2人は今、それを狙って前へと進んでいた。
「…ミンホ、足は大丈夫そう?」
「ああ…さっきより痛みは引いてる。グリードに戻って冷やしておけば、後はなんとかなるだろ。」
「そう。…あ、じゃあ朝食少し頂戴。お腹減ったの。」
「何がじゃあだよお前の分もあるだろ。…まあ、今回はお前に借りがあるし、しょうがない。」
「ふふ、やった。」
この一夜でAとミンホは親密な仲になっていた。
深いとは、決して1つの意味だけでは無い。
この事をミンホは短い時間でよく理解していた。
他の仲間たちとは違う、その仲間たちの中でもより信頼し合っているニュートと近いもの。
それが、今彼が彼女に向けるものだった。
「A。あっちに戻ったら、アルビーかニュートのもとに行け。俺は多分医務室に運ばれる。」
「…いいけど、それは何故?グリーバーの事?」
「いや、勿論それもあるが…。」
ミンホは言うと、Aに視線を向けた。
「…帰ったら、見せたいものがある。」
ずっと前にも見たことのあるような、そんな目をミンホはしていた。
そしてその目を見るだけで、彼の言葉の裏にある重要さが伝わる。
だからAは何を見せたいかを聞かなかった。
ゴゴゴゴゴゴッッーーーー。
触れ合う肌が熱くなる。
体の力が抜けるのを感じて、2人はほっとした。
「…ミンホ。」
「ん?」
「…日が昇る。」
扉の開く音が、日が昇る合図のようだった。
後少しで、仲間のもとに帰れる。
まだメイズの中だというのに、それを思うだけで
自然と笑みがこぼれてしまう。
そこで口を開いたのはミンホだった。
「今だけは…。」
彼は朝日から視線を離さない。
「今だけは、この景色が綺麗だと思える。」
Aは頷く代わりに、もう一度朝日を見る。
その景色は確かに美しいものだった。
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未確認生物(プロフ) - あの、メイズランナー大好きです。私も書きたいと思ってます! (2021年1月19日 21時) (レス) id: 1ab2c3b0b2 (このIDを非表示/違反報告)
めろん - はい!頑張ってください!待ってます! (2019年6月20日 17時) (レス) id: 5764f95332 (このIDを非表示/違反報告)
おわに(プロフ) - ありがとうございます!更新は遅めですが、これからもよろしくお願いします!! (2019年6月17日 22時) (レス) id: 418a4a3702 (このIDを非表示/違反報告)
めろん - 更新楽しみにしてます! (2019年6月17日 22時) (レス) id: 5764f95332 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おわに | 作成日時:2019年5月13日 2時