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十章一話@流血注意 ページ3

「……死にたい」


夏休み明け初日。昼休み、いつもの木陰で。

それは、思わず零れた言葉だった。
本気で死ぬビジョンがあるわけじゃない。

無意識に、口から溢れた。


カルマくんの少し見開かれた目と視線が絡んで、はっと気づいた。

なに、言って…るんだ。



「あ、いや………その。………今のは、定期的な発作のようなもの、といいますか」


カルマくんは、何も言わない。

ただ、いつもの、冷静な視線をこちらに向けていた。


その真っ直ぐな視線が、その整った顔が。
いつもはかっこよくて好きなのに、今は怖い。


「…き、にしないで……くだ、さい。死にたいわけじゃ、ないです…から」


つっかえつっかえ何とか言い切って、私は逃げるように駅へ走った。


まだ昼休みだったのに。
午後、サボっちゃうな。
ああ、荷物も置いてきちゃった。
定期と携帯しか持ってないや。

夏休み明け初日なのに。

竹林くんがE組を抜けた話で、皆はいっぱいいっぱいなのに。迷惑かけちゃうかな、心配、かけちゃうかな。


………カルマくんに、嫌われちゃったな。




椚ヶ丘駅の改札をくぐって、電車に飛び乗って。


最寄りで降りて、気づけば家についていた。



死にたかった訳じゃない。
ただ、長らく無視してきた私の日常にとけ込みすぎた死が、ふと顔を出しただけのことだった。


でも、彼の反応が怖くて。


カルマくんは、死にたがる私は嫌いだろうから。


……嫌われ、ちゃったよな。

何も言わなかった彼の顔が、痛いほどに冷静な視線が、脳裏から離れない。



カルマくんにさえ嫌われた今。

私は、……何を頼りに生きていけばいい?




弓道?勉強?
……また、昔の私に、逆戻り?




「……本当に、死にたくなってきた」



不思議と涙は出なかった。



ただ、ただ、この世界から、消えなくちゃと。



私の中の何かが必死に訴えていた。



睡眠薬を何錠か飲んで。
カッターを持って風呂場に向かって。


手首を切って水を張ったままの浴槽に突っ込んだ。


どくどくと溢れ出る血が水に広がっていく。




睡眠薬のせいか、痛みは無かった。

……切ったはずの手首よりも胸が痛かった。




私、何やってるんだろう。生きたいって、言ったのに。



カルマくんは、私にたくさんの幸せをくれたのに。

私は、…私は。

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設定タグ:暗殺教室 , 赤羽カルマ , 赤羽業   
作品ジャンル:恋愛
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さか - 絵もほんと上手で神だし、お話も凄く素敵です。更新待ってます! (2021年4月25日 7時) (レス) id: 084fbf2f8d (このIDを非表示/違反報告)
勾玉*(プロフ) - 夢主ちゃん私の好みドストライクなんですが……。続き、楽しみにしてます!!頑張ってください! (2020年6月8日 1時) (レス) id: 44b17a4264 (このIDを非表示/違反報告)
キヤナ - このシリーズ大好きです。面更新がんばってください。楽しみにしています! (2019年10月20日 21時) (レス) id: 256d9e1299 (このIDを非表示/違反報告)
白猫(プロフ) - 今日初めてこの小説に出会ったのですが、一目惚れして一気読みしてしまいました!夢主ちゃんが可愛すぎるし、カルマくんもかっこよすぎる、、、作者様のペースで更新頑張ってください(o^^o)これからも楽しみにしてます。 (2019年6月30日 0時) (レス) id: 44840d8a16 (このIDを非表示/違反報告)
- 続編おめでとうございますこれからも頑張ってください (2019年5月29日 17時) (レス) id: 0753bc1767 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あうおん | 作成日時:2019年5月26日 22時

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