#08 ページ8
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帰り道、時折立ち止まっては後ろを振り返る。
(陸くん……)
こんなに気になるなら止めれば良かったのだ。
彼女のことも、陸くんのことも。
でも、出来なかった。
「……」
だから兎や角言う資格はない。
もし、二人が付き合っても
“友だち”だから
素直に「おめでとう」って
笑って言えるようにならないと。
付き合うのかな……。
どうなんだろう……。
心臓が不安な音を立てる。
心がもやもやする。
(苦しい……)
どうしよう。
二人が付き合ったら。
私、笑って祝福なんて出来そうにないよ……。
再び歩き出した足を止めて、
後ろの、校舎の方を振り返る。
あの校舎のどこかで彼女は告白してるんだ。
そう考えると、胸が締め付けられる。
(やだ……)
そんなふうに思ってしまう。
じりじりと感情が焦がされているような感覚。
ぎゅっと肩にかけた鞄の持ち手を
両手で握り締めて駆け出した。
早く、離れたかった。
まだ、間に合ったかもしれないのに。
間に合ったら止められたかもしれないのに。
(……でも、そんな資格ない)
校舎を背に走る─────。
鞄の中で鳴るスマホからも、
不安を掻き立てる現実からも、
何も出来ないまま
ヤキモチだけ妬く厭らしい自分からも、
逃げたかった─────。
*
家に急ぎ帰ると、自分の部屋へ駆け込む。
鞄を放ってベッドに倒れ込んだ。
たぶん、さっきの着信は明日香からだ。
内容は恐らく告白の結果だろう……。
もしも。
“成功した”って言われたら、
どうしたらいいの。
“振られた”って言われたら、
どう答えればいいの。
弱いなぁ、私。
本当、弱虫。
力なく立ち上がって鞄の中からスマホを取り出す。
電源を入れると、
「えっ、嘘……？」
着信は、陸くんからだった。
何で陸くんが？
一体、何の用だったの？
(出ればよかった……)
後悔しながら、折り返しで電話をかける。
心臓がこれでもかと言うほどに
激しく脈打っていた。
しかしコール音が響くだけで
電話は一向に繋がらない。
諦めて、落胆に肩を落としていると
「あっ」
あることに気が付いた。
(LINEも来てたんだ……)
陸くんからの着信の後にLINEも来ていた。
陸くん俺、どうしたらいいかな
そんな短いメッセージが
心を抉った─────。
.
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年7月1日 18時
