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翌日の昼休み、私は一人屋上にいた。
『陸くんは、好きな人いるの……？』
『うん、いる』
─────即答だった。
また、ぐるぐると渦巻く思考が
私の心を掻き乱す。
(誰なんだろう……)
陸くんの好きな人。
“自分の気持ちに正直でいようと決めた”
彼はそう言っていた。
……だけど、全く分からない。
直接訊くわけにもいかない。
「はぁ……」
どんよりとした曇り空に
重たいため息が溶けた。
本当に。
陸くんの好きな人が、
私だったらよかったのになぁ……。
*
何となく……
陸くんの傍で、陸くんの“隣”を望むのが
分不相応のように思えて心苦しくなって
無意識に避けてしまっていた。
あんなふうにまた、
距離が開いてしまうかもしれないのに。
結局私は、覚悟があったのは一瞬だけで
やっぱり……
悪者になることが一番怖いみたいだ。
*
「A、帰ろー」
放課後、陸くんからそう言われたが
私は首を縦に振れなかった。
……最近はずっとこんな調子で
お昼も帰りも、陸くんを避けてしまっている。
前と同様に、陸くんは何も悪くないのに……。
悪いのは間違いなく私。
以前は避けることに明確な理由があったけど
今回は、自分でも分からない。
(─────ううん)
本当は分かっている。
……かも知れない。
ただそれを、私が、認めたくないのかも。
「今日は……、今日も、
明日香と約束があって」
目を合わせられないまま
俯き加減になって答えると
陸くんは肩を落として、
「また明日ね」と手を振って一人帰っていく。
(ごめん、なさい)
彼が教室を出ていって、
その姿が見えなくなっても
「……」
私は扉を見つめたまま立ち尽くしていた。
「ねぇ、何で？」
一連のやりとりを見聞きしていた明日香が
歩み寄ってきながら尋ねてくる。
「な、何が？」
彼女の真剣な表情に思わずたじろぐ。
「何で断ったの？
もう私に気を遣う必要もないのに」
「違うよ、明日香に気を遣ってる訳じゃ……」
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年7月1日 18時
