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『俺、昨日ケジメつけた』
そんなふうに告げられた日から早一週間ほど。
あの二人は今、
普通の友だち同士みたいな関係になった。
……付き合っていた頃よりは、
お互い自然体で断然仲が良さそう。
彼女も、
「未練なんてないよ、
最初からこう接せればよかった」
と、言っている。
「……」
私は─────
まだ、告白出来ないでいた。
*
朝、登校中に前方にキミを見つけて
「陸くん!」
迷わずその名を呼んだ。
振り向いた彼は立ち止まると
にっこり笑って手を振ってくれる。
私が追いつくと、挨拶を交わし歩き出す。
「これ、はい」
私は手にしていた、
ランチバッグを差し出した。
「おぉ、ありがと」
陸くんは心底嬉しそうにそれを受け取る。
最近はまた、
お弁当を作って渡すようになっていた。
そして昼には一緒に食べるように……。
それが、逆に不安を掻き立てる。
私の気持ちは一切変わっていない。
告白をするという決意も。
でも、今のこの距離が
『友だち』だから保てているのだとしたら……
と、考えてしまうから。
もし私が告白して断られてしまったら、
もう二度とこんなふうには喋れないのでは、と
それが怖くて一歩が踏み出せない。
『じゃあ、俺と友だちになろ?』
陸くんははじめ、そう言ってくれた。
あのときは天にも昇るほど嬉しかった言葉も
今は─────。
*
(あぁ……)
陸くんの心が読めたらなぁ。
傍にいる時間と比例して、
私の気持ちが伝わっていけばいいのに。
キミのちょっとした仕草や言葉で
ドキドキが止まらなくなる……。
(気付いて……)
なんて、思ってみたり。
心の中で思っているだけでは伝わらない。
声を出して、言葉に乗せて、
やっと届く─────って
あのとき、そう後悔したから。
もう後悔したくなくて
言いたいことはちゃんと伝えようと、
決意したのに。
だから言わなきゃ、私の言葉でキミに。
何もしないで傷つくのはもうたくさん。
そう思っても、私に向けてくれる笑顔を見ると
どうしても今の関係が壊れそうで─────
たった二文字でさえ、
なかなか伝えることが出来なかった。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年7月1日 18時