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#15 ページ15

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「……何にもないです!」

陸くんと同じ調子で返事をして

いつもみたいに笑ってみても、

陸くんは顰めて、心配そうな表情をする。

「本当に何でもないよ!」

改めてそう言うと陸くんは何処か

納得していない様子だったが

渋々、席に戻っていった。



(陸くん……)

顔を見れば、声を聞けば、

想いは止められないほど加速していく。

どうしようもないくらい好きで、

胸が張り裂けそうなほど切ない。

好きなのに、私の『好き』は

伝えることすら許されない。

伝えたとしてもそれは彼を困らせるだけ。

同時に、親友を裏切る行為だ。



分かっている。

でも、このままじゃ、本当に。

いつかあふれて

止められなくなってしまう気がして……。



*



お昼になり、

私は昨日のように学食へ向かおうと

自分の分のランチバッグを持って立ち上がった。

(……どうしよう)

机の横に掛かったままの、

もう一つのランチバッグを見やる。

それから、ちら、と陸くんに目をやった。

彼は何やら、明日香と話している。

それが済むと、

「!」

一直線に私の方へ歩いてきた。



(わわわわ……どうしよう!)

緊張で焦る私を他所に

陸くんは無邪気に笑いながら

「A」と名前を呼ぶ。

「今日も、一緒に食べよ」

「え? 明日香は─────」

「さっき断ってきたから大丈夫」

陸くんは遮るように言って見つめてくる。

私の返事を待っているみたいだった。

「わ、わかった……」

「やった! どこで食うー?」

お弁当も、今の誘いも、断る勇気があれば。

突き放す勇気があれば。

正しい選択を、頭では分かっている。

けれど、出来なかった。

私はやっぱり、弱虫だ……。



「教室でいい?」

陸くんは訊いたものの自分で答えを出した。

「うん、いいよ」

私は頷き、手に持っていたランチバッグを

机の上に静かに置く。

(お弁当、どうしよう……)

せっかくなら渡したいけど

どうしても、渡す勇気が出ない。



「じゃあちょっと購買行ってくる」

「え? あ……」

そうこうしているうちに、

陸くんは購買へと行ってしまった。

引き止める言葉も出ないまま、

その背中を見送ることしか出来ない。



追い掛ける?

どうしよう。

(あぁ、もう……)

私の意気地無し。



追い掛ける勇気すら、

私は持ち合わせていなかった。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年7月1日 18時

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