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#09 ページ9

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「あっ、ごめん、ね」

「うん、いや俺の方こそ……!」

反射的に身を退いた。

彼も同じようにして、顎まで下げていたマスクを鼻を覆うまで上げる。

何故か少し、心音が大きく速く鳴っている気がして、そのせいで頬が熱い。
こんなに戸惑うなんて恥ずかしい……。

動揺が伝わっていないか、とポキくんの方を見ると、マスクの隙間から覗く彼の白い頬も、わずかに色づいて見えた。

びっくりした。 私の心臓と頬がおかしいのかと思った。

「……」

ポキくんも、心臓がドキドキしていたりするのかな。
────なんて。
収めるように深呼吸すると鞄を肩にかけ直す。

「じゃあ……、行こっか」

どこかふわふわとした柔らかい空気に包まれながら言う。
ポキくんはこくこくと頷いた。



*



ショッピングモールは学校から歩いて10分ほどの所にある。

私たちはそこへ到着すると、まず百均へ向かうことにした。

「“造花 大量に”って、どんなのが良いのかな」

造花の陳列棚を見て呟く。

ポキくんは「んー」と適当に花に触れてみたりして考えている様子。

「あ、こういうのじゃない?」

彼が手に取ったのは花ではなく葉だった。

ツタのようにくるくるしている葉っぱのフェイクグリーンだ。

「いいね、それ! カフェっぽい」

私はそれを彼から受け取ると笑って言う。

「勝手なイメージだけど、こういう葉っぱにレンガって感じがする」

「分かる分かる! それと深緑のパラソル、みたいな」

私とポキくんの中の『カフェ』のイメージは、どうやらかなり近い……というか同じかも?

そんな小さな事実が面白くて、嬉しくて、少しの間お互いに笑い合っていた。

カゴの中にツタのようなフェイクグリーンを、そこにあるだけ入れていく。

彼は何も言わずにカゴを持ってくれていた。
こういうところはやっぱり、男子って感じがする。

「次はリメイクシートだね」

インテリアのコーナーに移動する。

リメイクシートは色々な種類のものが売られていた。
木目の柄、タイルの柄、レンガの柄などなど。

ポキくんはその中から赤っぽい色のレンガ柄のものを手に取り、こちらを向いて首を傾げる。

私は気づかぬうちに笑顔を浮かべて、そして頷いた。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時

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