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「タイミング見て、抜けようと思ってたんだけど」

れんがこっそり耳打ちしてきた。

「二人きりにする作戦、失敗した」

と、無邪気な笑顔を浮かべる彼。

急にそんなことを言われると、心臓が早鐘を打つ。
Aを意識してしまう。

ふと、下心丸出しの男子たちを見た。
今はこいつらがいてくれて、良かったかも。

「何これ?」

「昨日買い出し行ってきたときのやつだよ」

一人がAに話しかけた。
俺は分かりやすく警戒する。

「どんなの買ってきたの? ……あ、ごめん」

ビニール袋を持つ彼女の手と、そいつの手が触れた。
どくん、と心臓が跳ねる。

……やっぱり良くない。 前言撤回だ。

彼は「ごめん」とか言っておきながら、何だか嬉しそうに頬を緩めている。

わざとだ。 絶対、わざとだ!

俺は二人を引き剥がして、ビニール袋を奪う。
中身を近くにあった机の上に開けた。

「タグでも切ってろ!」

ふん、と踵を返す。
男子たちはぼやきながらも言った通りに動き出した。

……意外と素直じゃんか。
やっぱりいてくれて良かったかもしれない。



「ねぇ、ダンボールとかあった方がいいかな?」

と、Aがこちらを向いた。

人が複数いる中で、俺に話しかけてくれている。
その事実が嬉しい。 とてつもなく。

「リメイクシート貼る用にあった方がいいかも」

壁に直接貼ると塗装が剥がれる心配もあるし、シートが上手く剥がれないかもしれない。

「じゃあ私、貰ってくるね」

そう言って歩き出したAの後を追いかける。

「俺も行く」

ただ一緒にいたいからじゃない。 手伝うためだ。
ダンボールを運ぶのって結構大変だし。

「……ありがとう」

彼女は一拍置いてから、表情を緩めた。
俺も同じようにして、Aと教室を出た。



一階の階段横にあるダンボール置き場にはもう、小さいダンボールや破片しか残されていなかった。

他のクラスが持って行ってしまったらしい。

リメイクシートを貼って壁代わりにするのなら、それなりのサイズのダンボールが欲しかったのだけれど。

「どうしよ」

思わず呟くと「あ」とAが声を上げた。

「近くにスーパーあったよね? 行ってみない?」



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時

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