4-5 ページ47
.
「エイちゃん……？ エイちゃん！」
そらくんは窓の外の光景に目を見開いて、エイジくんの名を繰り返し呼んだ。
車のライトは消えて、再び辺りは真っ暗になった。
何の音もない。 奇妙なほど静まり返っている。
「投票、の時間」
と、ぶんけいくん。
皆が一斉に時計を見上げた。
「エイジは逃げた……。 だから人狼！
皆、あいつの言ってることは信じないで！」
陸くんが訴えかける。
それを聞いたそらくんが窓から離れると、真っ直ぐ彼の元へ向かった。
「何言ってんだよ……。
おまえ、絶対吊ってやるからな」
「違うでしょ」
と、ぶんけいくんはそらくんの肩に手を置くが、そらくんと陸くんは互いに目を逸らさない。
「エイちゃんはおまえが人狼だって言ってた」
「俺じゃない！」
2人の睨み合いは続く。
「……ない。 分かんない。 分かんない……」
耳を塞ぎ、宙に視線を彷徨わせながら、細い声で繰り返すはじめくん。
先ほどの光景が衝撃だったらしく、錯乱状態に陥っていた。
「分かれよ！」
そらくんは振り返ると一際大きな声で言った。
「はじめ、エイちゃんに村人側って言われたでしょ？
だから、あいつが人狼。 陸が人狼だよ」
「違う、人狼はポッキー」
そらくんは諭すような口調で言い、ぶんけいくんは説得を試みている。
「陸が人狼なんだよ」
「俺は人狼じゃない！」
陸くんはそらくんの言葉を真正面から否定した。
「おまえもそうだよ」
そして今度はポキくんに歩み寄るそらくん。
「エイちゃんに助けて貰ったんでしょ？
そんで、おまえは人狼じゃない。なら、陸が人狼」
そらくんは再び諭すような口調で言う。
ポキくんは微かに数度、頷いた。
「投票！ 3、2、1！」
そらくんが秒読みする。
私たちは一斉に腕を上げた。
私、そらくん、ポキくん、はじめくんは陸くんに。
陸くん、ぶんけいくんはポキくんに。
陸くんの首輪がピピッ、と鳴った。
最早聞き慣れた作動音と、それから響くモーター音。
「……っ」
陸くんは咽び泣き、呻き声を上げ、それから床に落ちた。
その衝撃が、振動が、ローファーを通して全身に伝わってきた……。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 370人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年8月15日 23時
