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正直よく分からなかった。
確かに、エイジくんが預言者の可能性は高い。
ただ、彼が仲間の人狼を切り捨てるような冷徹さを持ち合わせている、というのもまた事実な気がした。
とはいえ私は、そんなことに悩まされて一日を終えるつもりはなかった。
解散の流れになったので、私は厨房に来ていた。
死角の部分に立ち、真上にあるカメラを見上げる。
首輪を切断する。
そう考えついたは良いけれど、そのための道具が見つからなかった。
そのための良いアイディアも。
ため息をついて身体の向きを変えたとき、カシャンと音がして調理台の上にあった皿が床に落ちた。
床に、落ちた────。
「……」
ハッとして、私は駆け出す。
一日目の夜、血を拭った浴場の方へ。
あの日、ひっくり返してしまった箱は床に落ちたまま、中身が散乱している状態だった。
屈んで見ると、色々なものが詰め込まれていたのだと気がついた。
トンカチなどの工具、ペンなどの文房具。
その中の1つを手に取ってみる。
ヤスリだ。
「……」
これは────使える。
*
私はヤスリを隠すように持ち、ポキくんを呼びに行った。
それから2人で厨房に向かう。
いつもと同じように死角の部分に立ち、置いてあった金属製の灰皿を手に取った。
ヤスリを取り出し、擦り合わせてみる。
甲高い音が響く。
ポキくんと一緒に、黙って灰皿を見つめた。
しばらくしたところで、ヤスリを動かす手を止める。
灰皿の縁を見てみると、そこが小さく欠けていた。
「削れてる」
私がそう言って彼を見ると、彼は自身の首輪に触れた。
「時間がかかり過ぎないかな」
ポキくんの指摘は最もだ。
「確かに……すぐには切れないかもしれないけど」
しかし今は、これしか方法がない。
「犯人が仕掛けた罠ってことはないよね？」
ふと、ポキくんが言う。
本当は、連中は私たちのやろうとしていることに気づいていて、泳がされているだけかもしれない。
「……でも、やるしかない」
私は灰皿を調理台の上に置き、ヤスリを持ち直すと、自分の首輪に当てる。
怖い……。
もし、本当に罠だったら。
首輪が締まって、殺されるかもしれない。
呼吸が荒くなる。
だが、立ち止まるわけにはいかない。
意を決して、手を動かしてみた。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年8月15日 23時
