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「投票！」
改めて、エイジくんが声を張る。
トミーくんは皆を見回して訴えた。
「こいつが人狼で決定！ 俺は村人！」
エイジくんはそんな彼を見て口の端を持ち上げる。
楽しんでいるかのようだ。
「今の話に乗る奴はむしろ怪しい！」
トミーくんの言う通りだ。
今はポキくんと彼が疑われている。
というか、彼らに投票しやすい雰囲気がこの場を満たしている。
私が人狼なら、そしてもしあの2人が人狼でないなら、喜んでその流れに身を任せるだろう。
「3、2、1……！」
カンタくんがカウントダウンした。
私はまだ決めきれていない。 でも、指すしかない。
皆の腕が一斉に上がる。
結果は、トミーくんが最多票を集めた。
マホトくん、トミーくんはエイジくんに。
はじめくん、カンタくん、さぁやちゃんはポキくんに。
それ以外は皆、トミーくんに投票していた。
「何で俺なんだよ……」
皆の浅い息遣いが、そしてトミーくんの困惑したような声が耳に届く。
大半は私と同じようにおっかなびっくりという感じで指を伸ばしていた。
何人かは決然と、真っ直ぐ腕と指を突き出していた。
トミーくんが周囲を見回すと、皆気まずそうに目を逸らして腕を下ろす。
「誘導してんのはそっちだろ!?」
「当たり前だろ」
エイジくんが、トミーくんの視線を悠然と受け止める。
「俺はお前が怪しいと思った。
だからお前に票を集めた。 村人として当然じゃん」
「違う！ お前が人狼だろ!?」
トミーくんがエイジくんの胸ぐらを掴む。
間近で睨み合っていた2人だったが、ふと、エイジくんの視線がトミーくんの目からその首元へと移った。
それと、トミーくんの意識がエイジくんから逸れたのは同時で、その瞬間がはっきりと感じられた。
ピピッ、と機械音が鳴る。
トミーくんは自分の襟元へ手をやった。
そこから、歯医者さんの治療器具みたいな耳障りな音が響き始めた。
エイジくんの顔から笑みが消える。
トミーくんが低い呻き声を発しながら仰け反った。
首輪が直径を縮め始めたのだ。
金属の輪がみるみる彼の首に食いこんでいく。
それだけでは足りないのか、首輪は彼の喉元を抉り始めた。
ふらふらとよろめくトミーくんは私の目の前で床に倒れた。
倒れる瞬間、彼の喉から血が噴き出し、私の顔に飛んだ。
あたたかくて、ぬめりとした感触。
悲鳴を上げる間もなかった。
弾かれたように椅子から立ち上がる。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年8月15日 23時
