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「これ以降に出てきても俺は信用しない。
そいつは偽物だって判断する。 ……いいか?」
大柄なトミーくんの声はよく響いた。
「他に、預言者いない?」
彼はもう一度だけ尋ねた。
場は静まり返っている。
誰も名乗り出はしなかった。
「あまりにも情報が少ない。
これじゃ投票出来ないよ……」
陸くんがわずかに眉を寄せた。
「何となくだけど……」
さぁやちゃんが控えめに声を発した。
強気なわけではないけれど堂々としている。
「その人が怪しい気がする」
と、指した人物はポキくん。
彼はびくりと身を震わせ、彼女を凝視した。
たぶん私も同じような反応をしていたと思う。
「な、何で?」
ポキくんはさぁやちゃんからの懐疑の目に耐えられなくなったのか、視線を落としながら尋ねた。
「さっきから人と全然目合わせないし……人狼っぽい」
「確かに」
同意を示したのはカンタくんだ。
「おおー、そうだそうだ」と、そらくんもここぞとばかりに賛同する。
「お前が人狼なんだろ?」
「違う……!」
直ぐ様ポキくんは否定する。
「ポッキー」と、トミーくんが静かに彼を呼んだ。
「どうなんだよ」
その声はどこか威圧的で、ポキくんは彼から逃れるように床に目を落として俯いた。
「黙ってないで何か言えよ!」
「待って!」
苛立ったようなトミーくんの声に被せるように、気付けば私は割って入っていた。
皆の注目がポキくんから私に移る。
「それは、ゲームとは関係ない。
何人かには言ったけど、私はポキくんと小学校が同じだった。 前からこんな感じだったよ」
「それって、人狼が仲間の人狼守ってるってこと?」
さぁやちゃんの目がすっと鋭くなった。
「そんなんじゃない!」
私は泣きそうな気持ちになりながらも首を横に振る。
「さっきまで消極的だったのに急におしゃべりだね」
「……待てよ」
さぁやちゃんの攻撃の矛先がポキくんから私に向いたところ、エイジくんが止めに入った。
「もしそうなら、あからさま過ぎ」
彼はあくまでゆったりとした口調で言う。
……どうして私、必死になっているんだろう?
私がポキくんを庇う理由なんてない。
やっぱり、過去のことがあるから?
負い目を感じていて、償いたいという思いがあるから?
たぶんそうだ。 でも、それだけじゃない。
私は彼が内向的だということを、他人と目を合わせないのは配られた役職のせいじゃないということを、知っている。
そんな彼が理不尽に投票されないようにするのは当然のことだ。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時