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「何で俺!? ねぇ……っ」
彼は今も尚、誰かに何かを訴えかけている。
一体誰に？ 何を？ そして、ここはどこ？
分からない。 頭の中に疑問が増えるたび、嫌な予感が膨らんでいった。
もしかして私、誘拐されたの……？
「ここから出して！ これ、取れよ！」
彼がさらに喚いた。
これ、と首元に手をやっている。
それを見た人たちが同じように自分の首に触れた。
「は……？ 何だよこれ!?」
「取れねぇぞ！」
彼の他にも数人が騒いだ。
何……？と、私も自分の首元に触れる。
そこには冷たい何か────、輪があった。
とても細い首輪のようで、一部分に何か機械がついている。きっと、モーターか何かだ。
「ねぇ、ちょっと何か分かんないんだけど……」
と、小柄な女子が彼に声をかけた。
しかし彼は正気ではないようで彼女を「うるさい！」と跳ね除けただけ。
それを見ていた赤い髪の男子が「おい」と歩み寄るも、それさえ突き飛ばして耳を塞ぐ。
それからまた、室内をぐるぐる歩き回って先ほどと同じように、喚き始める。
「やりたくない」「したくない」「どうして」……。
そんな彼を目で追っていると、ふとある男子が目に入った。
部屋の隅で体育座りをして縮こまっている彼。
見覚えがあった。 そのマスク姿に。
「ポキくん……」
気づけば小さく呟いていた。
見間違うわけがない。あの日からずっと、私は後悔と罪悪感を抱えてきた。
いつか彼と再会出来たら謝りたいと望んできた。
そんな彼が、目の前にいる。
「おい！」
長身の男子の叫び声を掻き消すような怒声が響いた。
体格の良い男子のものだ。
それで少し落ち着きを取り戻したのか、彼は立ち止まり叫ぶのを止めた。
依然呼吸は荒いものの、今なら普通に話せそうだ。
数人が彼を囲むようにして立つ。
「ねぇ、どういう状況か分かんないから……。
何か知ってるんだったら教えて」
先ほどの小柄な女子が尋ねる。
「騒いでねぇで教えろよ」
赤い髪の男子も不機嫌そうに続いた。
彼の返事を待つように、場に静寂が訪れる。
「知りたい……？」
彼が声を震わせて言った。
「すぐに分かるよ。 あれが教えてくれる」
すっ、と指を指す彼。
その先にはブラウン管テレビがある。
その言葉が合図だったかのように、プツッとテレビの電源が入った。
青い背景に白い文字が浮かび上がる。
【ゲームの始まりです。】
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年8月15日 23時
