1-8 ページ8
.
マホト。
美希さん。
虫眼鏡。
─────私は挙げなかった。
「嘘……」
「マジかよ」
美希さんが呟く。
続いてマホトも。
2人とも目を見合わせ狼狽していた。
「ちょっとマホト……、何で？」
マホトは彼女の問いかけには答えず、困ったように眉を顰めて視線を逸らす。
「他にいませんかー？ ……間違いありませんね？」
虫眼鏡は全員に問うてから2人に問うた。
「何で……？何でそんな嘘つくの？」
美希さんが混乱したように尋ねる。
「ちょっと待てよ、俺が本物の────」
「あぁ、人狼なんだ？」
マホトの声を遮る美希さん。
「マホト、人狼なんだ？」
「……こっちの台詞だよ。
お前よくそんなこと言えんな」
2人の雰囲気が悪くなる。
(可哀想に……)
霊媒師の中に偽物がいるのは確実。
そしてその偽物は必然的に人外となる。
2人は、自分が死ぬか、好きな人が死ぬか、その二択を迫られているんだ。
「では僕はまた撤回します」
虫眼鏡が腕を下ろす。
今度は驚く人はいなかった。
「そちらの2人が本物の霊媒師か人狼、もしくは恋人陣営の誰かということです」
「お前本当うぜぇな！」
マホトがバンッと机を叩いて立ち上がる。
彼も辛いのだろう。
「ねぇ、撤回してよ！ 嘘って言って！」
美希さんが立ち上がったマホトの背中に叫ぶ。
「出来ねぇよ……。お前こそ正直に言えよ」
「言ってるよ……。 私、嘘なんかついてない」
2人以外が沈黙し、重たい空気が流れる中、腕を組むエイジが片方の口角を上げて笑う。
「面白い……」
─────と。
「リアル恋人同士が、いきなり敵同士」
「……」
「……」
波乱の幕開けとなった人狼ゲーム。
自己紹介と役職のカミングアウトはとりあえずのところ、これで終わりらしい。
何の情報もない以上、真偽のつけようもないし。
各々解散となったので私はそのまま食堂に残った。
ペットボトルの水を含む。
“ここ”は食料が豊富なので餓死する心配はない。
犯人はあくまで私たちをゲームで殺したいらしい。
「あの」
唐突に声をかけられ、反射的にそちらを向く。
食堂の出入口付近に陸が立っていた。
「ちょっと、話……いい？」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 422人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2018年3月10日 16時
