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「他にいませんか?
これ以降出てきても信じません。
いいですね?」
勿論そう言われて出る奴なんていない。
────それにしても、3人か。
狂人はいないし、恋人は騙っていない。
となると、本物と人狼とキューピッド?
「────では、僕は撤回します」
そう言って、真っ直ぐ挙げていた手を下ろす虫眼鏡。
全員が呆れたように彼の顔を見た。
「ちょっと待って、撤回って何?」
美希さんが嘲笑気味に尋ねるとあっけらかんとして彼は答える。
「撤回は撤回です」
「何でそんなことするの?」
と、私が訊くと淡々と答える虫眼鏡。
「人狼側や恋人側へのブラフです。
……今言ったように僕は預言者ではありません」
ですから、と彼は続ける。
「そちらの2人が本物と人狼、もしくは
恋人陣営の誰かと考えていいでしょう」
“恋人陣営の誰か”というのはつまりキューピッドか恋人の片方。
恋人である私とエイジは名乗り出ていないわけだから、どちらかがキューピッド?
……人狼の可能性もあるか。
いずれにせよ、早い所真偽をつけたい。
「続いて、霊媒師に名乗り出て貰います」
「ちょっと待って。それって必要?」
虫眼鏡に制止をかけたのはそらだった。
「いきなり預言者と霊媒師に名乗り出させるのは危険じゃねぇの?」
マホトも同調する。
「人狼に襲撃される可能性がある」
私も続けてそう言うが、虫眼鏡は首を縦には振らなかった。
「さっきも言ったけど、このゲームでは人狼側や恋人側が自由に密談出来てしまいます。
……それをされる前に一通り確認しておきたい」
「確かに……」
小さく呟いたのは、はじめ。
「人狼や恋人はまだ相談出来てない筈。
上手くいけば潰し合ってくれるかも」
「それか、人狼や恋人が全く手を挙げないか……」
はじめとツリメに虫眼鏡が答える。
「そうなれば儲けものです。
あくまで村人側にとって、という事ですが。
─────どうです?」
「……どっちでもいい」
彼の問い掛けに答えたのはエイジ。
口を開いたかと思えば強気な態度で大胆なことを言う。
それに今の言葉は
『騙っても騙らなくても“どっちでもいい”』
と言われているように聞こえた。
つまり自分は騙るつもりはないという事だ。
どうする。
虫眼鏡の狙い通り、こちらは相談出来ていないし考える時間すらない。足りない。
3人の言葉に脅されて余計に迷いが膨らむ。
「3、2、1」
結局─────
手を挙げたのは再び、3人だった。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2018年3月10日 16時