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このゲームの賞金1億円は『1人1億円』ではなく『合計1億円』。
生き残った人数が多いほど自分の取り分は少なくなる。
彼は、つまり、陸を見捨てるというのか。
「陸はキューピッド。……最悪、いらないよね」
「黙れよ」
私は怒気を含んだ声で言い、思い切り彼を睨んだ。
エイジは怯みもせず、悪びれもせず、更に距離を詰めてくる。
目と鼻の先で、視線が交わる。
「俺は前回勝った後、自分から参加を希望した」
その言葉が耳に届いた瞬間、彼に胸ぐらを掴まれていた。
「お前に何がわかんだよ」
彼の表情が何を意味しているのかは知れない。
「このゲームやらせてる奴らを突き止めるまで何回でもやってやんだよ。
────それで、この手でぶっ殺してやる」
殺気に満ちているその目に捉えられ、初めて彼の真意を覗けた気がした。
それから乱暴に解放され、よろめく。
エイジは髪を掻き毟ると声を張った。
「俺はまだ死ねないんだよ!」
「……」
私も、だ。
私も、まだ死ねない。
まだ、生きなきゃならない。
帰るべき場所があるから。
*
コンコン、と扉を小さくノックする。
返事を待たずに私はその扉を開けて中に入った。
マホトは浅くベッドに腰掛けていた。
私は向かい側にあった椅子に座る。
「……そらが本物の預言者だろ」
俯いたまま、彼は静かに言った。
「陸が偽物。
……何であいつ、俺たちの味方してんだよ」
言い換えれば─────。
「私と陸が恋人、って言いたいんでしょ」
「認めるんだ?」
「認めない」
ここが、正念場かもしれない。
……私は死ねないんだから。
生きなきゃならないんだから。
「あんただって同じ。
あんたが守られてるんでしょ、恋人の片割れに」
「違ぇよ、俺じゃない」
「私でもない」
ぴん、と張り詰めた空気に押し潰されそうになりながらも私は慎重に言葉を選び紡いだ。
「もし、あんたでも私でもないならこれが恋人陣営の目的。
昨日、そらが私に白出ししたのと同じ。
人狼同士に潰し合いをさせる」
「この段階でありえるかよ」
顔を上げた彼の目には警戒の色がたたえられている。
「別におかしくない」
私はその目を見据え、言い切る。
「今夜の襲撃であんたが私を殺すか、私があんたを殺したら、明日は残った方が吊られて────それで村人が勝つ」
マホトは私の言葉に揺らいでいるようだった。
両手を握り締め、額に当てて項垂れた。
……あと、ひと押し。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2018年3月10日 16時