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私の言葉にマホトが振り返る。

「“人狼は誰か1人を殺してください”っていうルールだった……。
別に“村人側”とは言われてない」

彼が聞いていようがいまいがどっちだって良かった。

あえて口に出すことで自分の考えを整理していく。



「じゃあなにか?」

彼は自分の首輪にぞんざいに触れた。

「今のは人狼による襲撃と看做された、だからこいつが絞まらなかった、そういうことかよ」

「そうかも」

「なら、反撃した場合は?」

「え?」

マホトは凶暴な目つきで私を睨んでいる。

「お前が反撃して、俺をぶっ殺した場合は!?」

「知らないけど!
……最終的に死んだ人が襲撃された人って事じゃないの」

答えなんかわかるわけがない。

私は天井を見上げ、監視カメラを見る。

この建物内ではどこにいても監視カメラが目に入る。

この場のそれは、当然ながら疑問への答えをくれたりはしなかった。

ただ、こちらへ冷たい、無機質な視線を注いでいるだけ。



「……ねぇ」

ここが肝心。

何としてもマホトの信頼を得なければ。

夜に殺されないことは勿論、人狼陣営の勝利条件を満たすには彼との協力は欠かせない。

真実かどうかはともかく、人狼が人狼を襲えるかもしれないと思いつけたのは幸運だった。

「そらが私に“村人”って宣言したのもこれが目的なんじゃないの?」

マホトが、私の目を真っ直ぐ捉える。

「人狼2人を疑心暗鬼にさせてお互いに殺し合いをさせる─────。
人狼が人狼を襲えること、あいつは知ってたのかもしれない」



「……」

彼が疑わしそうに見てくる。

私は、言葉を重ねた。

「あんたならする?
相棒の恋人に、しかも人狼って分かってる相手に、いきなり白出しとか。 露骨でしょ!」

マホトは揺れているようだ。

「なら、あいつは何なんだよ!」

再び椅子を蹴り飛ばし、テーブルに項垂れた。

「偽物の預言者で 適当に言っただけ、ってこともあると思う」

最後の一押しを試みる。

「……疑いたくなる気持ちはわかる。
だったら今日も、襲撃先はあんたが選べばいい」

彼が私の目を覗き込んでくる。

私はその視線をしっかり受け止めた。

マホトが襲撃先にエイジを選ぶようならそのときはそのときだ。

本当に殺し合いをするしかない。

「……私が恋人の片割れなら、こんなこと言えない」



彼は、ふっと肩の力を抜き、ナイフを片手に歩き出した。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2018年3月10日 16時

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