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「何で……？」
「何で死なねぇんだよ！」
何人かの戸惑う声が響く。
咳き込む虫眼鏡を見下ろして一同が混乱を顕にしていた。
「処刑のルール説明、前回と少し違ってた！」
陸が叫んだ。
「“最多票を集めた人を処刑してください”─────って！」
「一緒じゃん！」
美希さんが茶色い髪を振り乱す。
「前回は……“処刑されます”だった！」
陸の言葉にツリメがそう付け足した。
漸く理解出来た。
処刑されます、ではなく、処刑してください。
それが今回のルール。
「自分たちで殺せ、ってこと？」
私は誰にともなく尋ねた。
「ああもう、どうなってんだよ！」
てつやが髪を掻き毟った。
……皆、わかってるけどやりたくないんだ。
だから信じようとしない。
場がますます混迷を極める。
そのとき。
不意に沈黙を貫いていたテレビが点いた。
【下の箱に武器を用意しました。
この部屋からは持ち出さないで下さい】
いち早く動いたのは、てつやだった。
テレビが置かれている台の下にいつの間にか設置されていた黒い箱。
蓋を開け、中身を手にした彼が振り向く。
照明を反射して光るのは、サバイバルナイフだ。
「そんな、」
虫眼鏡の顔色が、赤から白へと変化した。
「そんなこと許されない！」
彼は椅子を蹴り倒し、出入口へ向かって駆け出した。
その動きが引き金となって他の連中も動き出す。
マホトが虫眼鏡の後ろ襟を掴み引きずり倒した。
動けないようにはじめが上から捕まえる。
2人がかりで抑えられた彼はもう逃げようがない。
「誰か来いよ！」
マホトが叫ぶ。
抑える2人はそれで精一杯だ。
サバイバルナイフを持っていたてつやは殺す勇気が出ないのか、それを思い切り床に投げつけた。
それは床を滑り、3人の元へ流れる。
誰も率先して動こうとはしない。
当たり前だ。
誰も直接人なんて殺したくない。
投票だって人殺しだけど、その辺の感覚はもう麻痺している。
皆が顔を背け、無言のまま『人殺し』を他人に押し付け合う。
そんな中でただ1人、赤髪が動き始めた。
床に転がるサバイバルナイフを拾うエイジ。
虫眼鏡が抵抗を始め、マホトとはじめが突き飛ばされた。
「逃げんなよ！」
床を這うようにして逃げ惑う虫眼鏡。
エイジが思い切りナイフを振りかざした。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2018年3月10日 16時
