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「起きてください、あなたが最後……」

聞き慣れない男子の声と共に優しく身体を揺すられる。

私は床に倒れていたらしく、そっと身体を起こすと、黒髪の男子生徒が屈んで私の肩に触れていた。

“最後”というのは、目覚めるのが最後、という意味だろう。

私以外の人は皆、既に目覚めている。

辺りを見回して、悟った。



(始まった……)

二度目の殺戮ゲーム。

前回とは違い、さほど混乱はしなかった。

ほぼ無意識に、左手首にはめている腕時計に触れる。

お守りのような存在のそれは今の私の“生きる意味”だ。



最早、お馴染みのこの部屋は夜に投票をするための部屋。

11脚の椅子が内側を向いて円形を作って並んでいる。

少し見上げた先の壁にアナログの時計が掛かっていた。



「マホト!」

茶色の髪をゆるく巻いた女子生徒が一人の男子生徒に駆け寄って、その勢いのまま抱きついた。

恋人同士だろうか。

彼氏の方は黒髪で整った顔立ちをしている。
美男美女のカップルだ。



「全員起きましたねー。では、進めていきます」

眼鏡をかけた低身長の男子生徒が設置された古いテレビの横に立ち、全員にそう声を掛けた。

「いやいや、ちょっと待って」

オレンジ色が目立つ派手な髪の男子生徒が、チビ眼鏡の彼に言い放つ。

「誰、お前。 てかこれ何……?」

「僕は虫眼鏡と申します。
皆さんと同じこのゲームの参加者です」

制服をきちっと着て、敬語で、いかにも真面目な一年生という感じだ。

「先に言っておきますがここから逃げ出す方法はありません」

落ち着いた態度といい、言葉の内容といい、彼も二回目の参加なのだろう。



「生きてここを出るにはゲームに勝つしかない」

それは大前提の話。
負ければ、待っているのは“死”のみだ。

「これ……」

虫眼鏡とは別の、眼鏡の男子生徒が混乱したように首元に触れる。

そこにあるのは首輪。

細いワイヤーで、巻き取りリールがついており“死”が確定した者はこれが絞まって死ぬ。

彼だけじゃなく、全員の首につけられていた。

勿論、私にも。

しかし長い時間 つけられたままなのでいつしか身体の一部になってほとんど違和感を感じなくなっていた。



困惑した様子の眼鏡の彼を派手髪が訝しく見つめる。

「何これ」

同じような調子で呟いた細身で長身の男子生徒をその後ろにいた黒髪の男子生徒が、そちらもまた訝しく見つめていた。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2018年3月10日 16時

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