【アバンティーズ】純情センチメンタル (ページ41)

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#最終話ページ41

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「……もっと早く気付けばよかった。
いつも助けてくれてたエイジを
自分でも知らないうちにどんどん─────」

目の前で赤い髪が小さく揺れる。

「好きになっ……」

その先の言葉は喉の奥に引っ掛かった。

エイジが振り向き、そのまま私を抱き締めた。

頬に掛かる髪が擽ったくて、でもそれ以上に愛しい。

回された腕は冷たくなくて、

温もりにまた、泣きそうになった。

「俺だからって、油断すんなよ」

さっきよりも鼓動が速まる。

「そんなこと言われたら
俺だってもう、限界だから……」

抱き締められる腕に力が込められたのが分かった。

私は少し迷ってから両腕を彼の背中に回した。

『隣の席になったの、初だよね』

『よろしくね！』

偶然同じ学校、偶然同じ学年、

偶然同じクラスで、

偶然隣の席になったあの日から

実はもうすべてが

始まっていたのかもしれない。

そんな“偶然”がひとつでも欠けていたら

今のこの時間は生まれなかったんだ。

そらが好きだった私。

彼には『恋に恋をしていた』と言ったけれど、

きっとそれは違うと思う。

確かに“その先”は望まなかったかもしれない。

でも想いは本物で、

だからあんなに傷ついて、辛くて、苦しかった。

その痛みを知っているからこそ

“望めなかった”のだろう……。

それを望んだ瞬間に

誰を傷つけてしまうかわかっていたから。

『好き』という

どこまでも単純で明快な感情は、

果てしなく難しくて

なかなか思い通りにはならない。

でも、そんな感情が愛しいから

人は人を好きになれる。

私も。エイジも。

そらも、彼女も。

純情なそれを貫いたから

『好き』を好きでいられたんだ。

何度も喧嘩した。何度もすれ違った。

たくさん傷ついて、たくさん傷つけた。

躊躇ったり、戸惑ったり、

時には迷ったりしながら

私は私の、本当の想いを見つけた。

エイジが好きだという、

そんな想いを─────。

「さっさと気付け、ばーか」

離されて見えた笑顔に

すべてが溶けてしまいそうな気がした。

もう戻れないくらい、

私は充分、エイジが好きだ。

─Fin─