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「……だよね」
返ってきたエイジの声もいつもとは全然違う。
切なげで、苦しげで、消え入りそうな声。
「エイジも、辛い恋してるんだ」
確かめるように言ってみると
「……」
と、彼は黙り込んだ。
図星なんだ。
何だか可笑しくなってこっそり笑うと
「笑うなよ」と軽く睨まれた。
「でも、何か意外。
エイジなら直ぐにでも付き合えそうなのに」
「知らないの? 俺って案外、純情なんだよ」
そう言うエイジに、
再び笑うと彼も同じように笑った。
教室の窓から見える冬の晴れた空は高い。
澄み切った空気に鼻がツンと痛くなる。
視界の端に映る赤い髪と、
少し離れたところにある君の背中を見て
何となくセンチメンタルな気分になった。
*
「A、帰ろー」
放課後、そう声を掛けてきたのは
エイジではなくそら。
この上なく嬉しい筈なのに
私の心は何処か曇っていた。
「うん、ちょっと待って!」
教室の扉の所に立っている彼に言って
鞄を肩に掛けた。
「……嫌なら断れよ。そしたら、俺と帰れる」
隣の席の彼が
そらに聞こえないよう小さな声で言った。
「嫌じゃないし!エイジより全然いいよーだ」
「あっそ! じゃあさようなら、バカA」
いつものように軽口を叩いてエイジと別れ、
私は早足でそらの元へ向かった。
「やっぱ仲良いよね」
歩き出すなり彼は言う。
「誰があんな奴!
てか私、他に好きな人いるし!」
ただ誤解して欲しくない一心で
口走った一言に、後悔しても時既に遅し。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時