#34 ページ34
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私はそらのことが好きで、
エイジはただの友だちで、
そんなずっと変わらない関係性を
実は望んでいたのかもしれない。
……自分が傷つきたくないから。
いつからだろう。
一体いつから、
私は そらを好きになったのだろう。
きっかけなんて分からない。
でも他の誰よりも、私は彼が好き。
好き─────“だった”。
気付いてしまった。
この心の違和感と、切なさと苦しさの正体。
『俺と……付き合って、くれない？』
そらにそう言われた瞬間、
胸の奥で何かが弾けた。
『今まで本当のこと言えなかったけど……
俺、本気でAのことが好き─────』
記憶の中の赤い髪が揺れる。
どうして、今。
エイジのことなんか……。
揺れ続けていた想いが定まる。
歪みきった三角が、割れた─────。
「……ごめんなさい！
私、そらとは付き合えない」
今更、自分の正直な想いに驚きはしない。
ずっと否定して閉じ込めてきたけれど
本当は─────。
「……何となく分かってた」
そらが儚く笑って両手を解いた。
肩に残った温もりが寂しい。
「私もそらが好きだったよ……、前は」
もう何も偽らない。
私が私の本当の気持ちを隠したら
それは埋もれて死んでしまう。
一度でも育んだ想いを
自分自身でなかった事にしてしまうのは
あまりにも悲しい。
私が今日の休み時間、
彼に「伝えたいことがある」と
言えなかったのはもしかしたら
私の意気地がなかったんじゃなくて
無意識の深層心理が
ブレーキをかけたのかもしれない。
そらが好きだったこと。
それは……。
「恋に恋してただけだったんだと思う……」
“付き合えたら”とは確かに考えた。夢見た。
でも─────
“付き合いたい” と願ったことが、
一度でもあっただろうか……？
「恋に、恋……」
そらがぽつりと呟く。
私は黙って、目を伏せる彼を見つめていた。
「何なんだろうね。
“好き”に本物も偽物もないのにさ」
吹き込む風が再びカーテンを揺らす。
「俺の気持ちは偽物だったのかな、
とか暗いこと考えちゃう」
苦く笑うそらが痛々しかった。
わがままかもしれないけど
彼にはこんなふうに笑って欲しくない。
もっと、前みたいに、
明るく笑っていてほしい。
つられて周りも笑顔になっちゃうような
そんな笑顔に戻って欲しい。
……それは、
“私の隣で” という意味じゃなく。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年11月25日 1時
