#18 ページ18
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「────俺さ、このままでいいのかな」
それはまるで返事なんて求めていないような
そういう問いかけだった。
「……とか、最近思っちゃったり」
重たい空気を誤魔化すように
おどけたふうに笑う彼だけれど
しかし今は、それも空回り。
「どうして？」
急にそんなこと、と私は尋ねる。
「んー。自分でもよく分かんないけど」
苦々しく笑って答えるそら。
(……そうだ、そういえば)
────彼もそうだった────。
そらも、己の『好き』に迷いがなかった。
真っ直ぐで、素直で、一途。
眩しいくらいに純情なそれだった。
一体何があったのだろう。
顔を覗かせたその小さな“迷い”は
確実に、存在感を増してきていた。
後戻り出来ないほどに。
歪んだ三角の輪郭が、
うっすらと見えてしまうほどに─────。
*
─Side E─
「昨日は楽しかった？」
「ん？ うふふふふふ」
翌朝、昇降口で会った彼女は
頭がおかしくなっていた。
「気持ち悪」
と、そう告げてから
教室に向かい歩き出すと
「ひっど！」
慌てて靴を履き替えて追ってくるAの
抗議の声が聞こえてきた。
(……さっきのは、何の笑いなんだよ)
「何か進展したみたいで良かったね」
「別にしてないよー」
当たり前のように隣に並んでくるAが
愛しくて、そして苦しくなった。
「ねぇ。
エイジは、そらのこと何か知ってる？」
(……)
そら、と彼女の口からその名が出るたび
いちいち傷ついてるのも、
いい加減女々しい。面倒くさい。
「どういうこと？」
質問の意図がイマイチ分からず聞き返すと
Aは少し迷ったように顰めてから
結局、口を開いた。
「そらって千夏ちゃんのこと、
ずっと一途に好きだったじゃん。
ぞっこんだったじゃん」
「え？」
どうしたんだ、いきなり……と。
わざわざ自分が傷つくようなことを、と。
そんな困惑が顔に出ていたらしく
Aは─────Aも、
困ったような表情を浮かべた。
「なのに突然、
“このままでいいのかな”って、昨日……」
「え、あいつが？」
彼女は小さく頷いた。
(……嘘だ)
まさか そらが
そんなことを言うなんて有り得ない。
──────そう思う反面。
『えぇー、いいじゃん！
Aを独り占めすんなよー』
『……彼女』
『あ、そうだった。 忘れてた』
ひょっとしたら、と思ってしまう。
「……」
.
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年11月25日 1時
