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トミーくんは殴られて殺されたようだった。
彼の顔には痛々しい痣が浮かび
所々に血が飛び散っていた。
*
昨日までと、何だか感覚が違う。
上手く言葉に出来ないけれど……。
恐怖、不安、疑心、後悔。
色々なものが織り交ぜられて────
(あぁ、そっか……)
私、昨晩初めて自分の意思で投票したんだ。
明確に“殺す意思”を持って。
初日も投票はした、でもそれは
あくまでも追い詰められて無意識にだった。
でも昨日は違った。
彼を、殺すために投票した。
……仮にここを出られたとしても
一生逃れられないものを背負ってしまった。
このゲームは、生き残れば生き残るほど
多くの死を目の当たりにすることになる。
生き残ることに“責任”が生まれる。
これまでのすべての死に
責任を持たざるを得なくなる……。
*
食堂でマホトくんに遭遇した。
「今日は……
Aかそらに投票するしかない」
彼はテーブルに肘をつき頭を抱えていた。
「でも俺はAに入れたくない。
Aを信じたい……」
彼の額に当てた手と前髪の隙間から覗く目が
不安げにゆらゆらと揺れている。
マホトくんだって、私と同じ。
ずっと追い詰められていたんだ。
それを隠して、気丈に振舞ってきたんだ。
「────だから、俺はそらに投票する」
どくん、と心臓が大きく跳ねた。
「今から何があっても、何を知っても、
判断は変えない。 もう決めた」
「それなら」
背後から冷たい声が聞こえてきた。
食堂の出入口にそらが立っている。
彼はこのやり取りをすべて聞いていたようだ。
「それなら俺としては
マホトに入れるしかなくなる」
確かにそらはその選択肢しかなくなる。
なぜなら、そうでないと必ずそらが死ぬか
投票では誰も死なない。
つまり、夜に村人が殺されることになるから。
今日の投票で決めなきゃ、
村人の勝利はない────。
朝食をとる食欲はなく
自室に戻るとベッドに腰掛けた。
「……」
二人がお互いに入れるとなると
最終的な犠牲者は私が決めることになる。
私がマホトくんに入れたらマホトくんが、
そらに入れたらそらが……。
どちらかを、私が選ばなくてはならない。
(どちらか……)
そもそも、マホトくんがいなかったら
私はきっとここまで生き延びられなかった。
正気でいられなかった。
間違った判断でもっと早く
人狼を勝たせていたかもしれないし……。
本当にマホトくんに支えられて助けられて。
(でも────)
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
