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「もし二人が人狼なら……
カンタさんはトミーくんに投票しないはず」
諭すような口調で言った。
これは、この“真実”は、
そらにとっては決して良いものではない。
簡単に受け入れられるものではない。
「混乱させようと思ったんじゃないの……？」
そらが泣きそうな表情で見つめてくる。
「序盤戦ではしない。 効果も薄い。
……頭の良いカンタさんが
そんなリスクを冒すとは思えない」
そらの目がゆらゆらと揺れる。
「何で……？ 何で昨日、
カンタそれ言わなかったの？」
「カンタさん、あのときパニックになってた」
逃げ道を探すように視線を彷徨わせるそら。
彼の口から出てくる可能性を
私は慎重に封じ込めるしかない。
「エイジくん、二人とも人狼だって言ってた」
正直これ以上は話したくなかった。
だが今さら逃げるわけにもいかない。
そらも頭では真実を理解している。
「少なくともカンタは人狼じゃないのに……」
そらが机の上のノートに目を落としたまま
呟くように言う。
「……エイちゃんが村人なら、
そんな嘘つく必要ないんだよね……」
切実な表情を向けられる。
視界が滲んで涙が一筋こぼれた。
どうしようも出来ない。
避けようのない真実は残酷過ぎて。
私は弱く頷いた。
そうすることしか出来なかった。
「でも、でも……」
そらが顔を歪めた。
「エイちゃんが人狼なら、
俺のこと守れないじゃん……。
守るって言ったのに……っ」
私はぎゅっと唇を噛み締める。
感情が昂り折れるようにしゃがみ込んだそら。
その頭を撫でて慰めようとしたが
慌ててその手を引き戻す。
私にそんな資格はない。
彼の方が生きようと必死に戦っているのだ。
「……」
しばらく経つとそらが俯いたまま口を開いた。
「エイちゃん、人狼なんだね……」
*
エイジは一人、部屋に閉じこもっていた。
鉛筆片手に頭を抱えている。
「……」
葛藤に、心が揺れていた。
コンコン、と小さなノック音が響く。
そろりとエイジは立ち上がり、扉を開けた。
そこには沈痛な面持ちの幼なじみがいた。
*
「じゃあ、それってつまり……
この中に人狼がまだ、
二人残ってるかもしんないってことだろ」
マホトくんの部屋を訪れた私は
先ほどそらとした話と全く同じ話を彼にもした。
椅子に座って呟いたマホトくんを
ベッドに腰掛けたまま見つめる。
カンタが人狼じゃないってことは、と続け
思案するように両手を握り締める彼。
私はマホトくんから目を逸らさない。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
