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昨日と同様、輪から椅子を1つ抜き、
そこにカンタさんを座らせる。
理沙さんとエイジくんはまるで処刑人のように
そんなカンタさんの両隣に立っていた。
私とそらは少し離れた位置に座り込み、
トミーくんも少し離れた所で、
でもカンタさんの正面に立っている。
青酸カリ入りの瓶などを載せた盆を床に置き
屈んだマホトくんは黙ってゴム手袋をはめた。
黙々と“処刑”の準備を進める彼。
そんな彼を見つめていたカンタさんの呼吸が
だんだん荒く、速くなっていく。
虚ろな目が、私を捉えた。
「Aさん……」
私は視線を上げて彼を見る。
「最初の夜、何で俺を指したの？」
……何で、だろう。
ふと頭の中に図書室で
彼のツイートを見たときの記憶が蘇る。
あのとき確かに感じた、曇った感情。
「俺のこと軽蔑してたからじゃない？」
「え……？」
その感情の名前を、彼はそう称した。
「あのときのこと」
刹那、心臓が、射抜かれたみたいに痛んだ。
あのとき、というのはきっと
私がカンタさんのフォローを外したときのこと。
気づかれていた。
何も答えられない。否定も肯定も出来ない。
でも、彼の言う通りだと思った。
私は無意識に、気づかないうちに、
たぶん彼を……軽蔑していた。
カンタさんはそれ以上、何も言わなかった。
マホトくんがペットボトルの中の水に
青酸カリを溶かし、振って混ぜる。
それを見たカンタさんは唇を噛み締め、顔を歪めた。
「ごめん……」
細い声で謝るカンタさん。
エイジくんと理沙さんは
彼が暴れないように押さえている。
混ぜ終えたマホトくんがカンタさんに向き直る。
「この期に及んで、ごめん……」
カンタさんが再び謝った。
マホトくんは首を横に振り、言う。
「……こっちこそ、ごめん」
カンタさんが嗚咽する。
ぽたぽたと涙が彼の膝に落ちる。
「……俺は本当に人狼じゃない……」
涙の隙間で訴える彼。
マホトくんは悲痛な面持ちで俯く。
エイジくんは眉根を寄せ、
カンタさんを見下ろしていた。
理沙さんは視線を、トミーくんへ移した。
「あんたが殺してよ」
トミーくんは黙り込んだまま、突っ立っている。
「もう一人の人狼なんでしょ？」
理沙さんがカンタさんから手を離し、
彼の方へ歩み寄っていく。
そして勢いよくトミーくんの胸ぐらを掴んだ。
「皆のために殺せよ！
それか、あんたも死ね！」
彼女の甲高い声が響き渡る。
容赦のない言葉がこの場に殺意を呼び込む。
残酷な空気に包まれ、ただ呼吸をすることすら苦しい。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
