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「これ、ありがとう」
毛布を差し出す。
「でもA、毛布ないと……」
マホトくんが眉を顰める。
やっぱり彼は優しいなぁ……。
「自分で何とかする。
……部屋にシーツとかあるから、大丈夫」
と言って頷いてみせると
漸く受け取って貰えた。
「────強いね」
ふるふる、と首を横に振る。
「そんなことない。 ……弱いよ」
ついさっきもそれを痛感したばかりだ。
「とにかく、ありがとう」
頭を下げて歩き出すと「あのさぁ」という
マホトくんの声に引き止められた。
振り向くと、彼が廊下に出てくる。
「……ああいうの、やめろよ」
“ああいうの”が何か分からず、
彼の方を見つめ返していると
マホトくんがわずかに視線を落として言った。
「自分のこと指すの」
あぁ……と思い至ると同時に私も目を伏せた。
「だったら自 殺しろって思う」
そう言って再び目を上げるマホトくん。
その厳しい視線と言葉が刺さって俯いてしまった。
「……ごめん」
と、マホトくんが歩み寄ってくる。
「俺はただ、Aに生きてて欲しくて」
こんな状況でも他人のことを考えられる彼を
素直に凄いと思っていた。
「もっと、逞しくなって」
……このゲームが始まる前から、
私は強くなんてなかった。
引っ込み思案で
直ぐに人に合わせてばかりの私を
優しく穏やかに引っ張ってくれていたのが
親友のさぁやだった。
ずっと彼女に助けられていた……。
「……いつも、彩矢佳に守られてたんだ」
こんなこと言ってもしょうがないのに
口をついて出てしまった。
「────俺が守る」
マホトくんの一言に驚いて顔を上げると
逆に彼は直ぐさま俯いてしまった。
毛布で顔を隠すようにして
「ごめん……！」と謝られた。
私は再び首を横に振る。
「……ありがとう」
微かに笑って、踵を返した。
純粋に、そう言って貰えたのが嬉しかった。
自室に向かって歩いていき
扉の取手に手をかけると
「Aさん」
と、声を掛けられた。
振り向くとノートを手にしたカンタさんと
その隣にエイジくんが立っていた。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
