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「やり方が汚い」
マホトくんがはじめくんの問いに答えた。
「そいつ、
私らにトミーを指せって持ちかけたんだよ」
続けて理沙さんが
はじめくんに追い打ちをかける。
彼は表情を強張らせていた。
場にわずかな沈黙が訪れる。
ややあって
トミーくんが腹立たしげに立ち上がったが
それを制するようにカンタさんが口を開く。
「もう時間がない。 決選投票しよう……！」
エイジくん、トミーくん、はじめくんを対象に
再投票しなければならない。
今度はこの3人の中から、
間違いなく死亡者が決定する。
もしかしたらそれは、
私が指した相手になるかもしれない。
そうしたら、私が殺したも同然だ……。
(選べない。 投票なんて、出来るわけない)
「せーの……」
と、はじめくん。
不安が声色からも滲み出ていた。
皆が一斉に腕を上げる。
私は出来なかった。
3人の中から、犠牲者を選ぶことなど。
だから、自分自身を指さした。
他の人は皆、はじめくんに投票しており
彼自身はトミーくんに入れていた。
「……っ」
はじめくんは顔を歪ませ、
時折嗚咽を漏らしている。
カンタさん、エイジくん、
理沙さんが率先して動き
浴場の近くにあった洗面所から
コップと水で満たしたペットボトル、手袋、
それから茶色の瓶を盆に載せて運んできた。
茶色の瓶には小さな紙がテープで貼られている。
【正しいKCN(青酸カリ)の使い方】
その紙に書いてある言葉を
カンタさんが読み上げる。
【致死量は0.2〜0.3gで、耳かき一杯分です。
用法、容量を守って正しく服毒してください。
服毒後、5〜15分で意識が昏倒し、
その後死を迎えます。
触れるだけでも死に至ることがあります。】
輪の中から一つだけ椅子を引き抜いて
そこにはじめくんが座っていた。
恐怖からか涙と汗で顔を濡らし、
何も無い宙を見つめている。
トミーくん、理沙さん、
マホトくん、エイジくんが
そんな彼を囲むようにして立ち
少し離れた所に
ポッキーくんが体育座りしていた。
私はポッキーくんとはほぼ反対側の壁際に寄り
床に座って成り行きを見つめる。
そらくんも私の隣に座り、
はじめくん同様に
恐ろしさから来る涙を呑んでいた。
カンタさんが盆を床に置き、
はじめくんの正面に座る。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
