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こんな何もない道端で何をしているのだろう、と
すれ違いざまに横目で見てみる。
彼らのうちの一人が持つタッパーの中に
生きた小さな蟻が入っていた。
彼はピンセットで蟻を摘むと
傍の低木に張られた蜘蛛の巣に乗せた。
巣の主である蜘蛛がその蟻を捕食すると
男子小学生たちは歓声を上げる。
思わず立ち止まった。
気づかず歩いていくさぁやを引き止めて
彼らの方を指して見せた。
眉を顰め、怪訝な表情を浮かべる、
私たちの視線に気づいたのか
一人の男子が振り向いた。
「何すか」
それにつられて他の子も振り返る。
「僕らこの蜘蛛飼ってるんすよ。餌あげてるんすよ」
「蜘蛛が死んだら責任取ってくれるんですか」
「ばいしょう金で1億円払ってくれるんですかぁ？」
ケラケラ笑う小学生たち。
さぁやの表情が微かな苛立ちを含めて曇った。
私は彼らの方へ歩みを進めて言う。
「蟻も蜘蛛も、君たちのおもちゃじゃないでしょ」
押し黙った小学生たち。
少し経って再び笑い出したが
その声は直ぐに止んだ。
彼らの視線が、私とさぁやの、
更に後ろに向けられていることに気づいた。
(何……？)
ゆっくりと振り向く────。
「……っ」
自分の目が何を捉えたのかすら分からないまま
そこで意識が途絶えてしまった。
*
何だろう……、この音。
衣擦れのような音や靴音が聞こえる。
そっと目を開けると真っ暗な室内に
何人かの蠢く影が見えた。
「何これ？ 何これ？」
隣で同じように
目を開けたさぁやが困惑の声を上げる。
「誰かいるんだけど……」
ほぼ同時に身を起こし、周囲を見回す。
数秒前の私たちのように
意識を失って倒れている人たちもいた。
ドクンドクンと心臓が重たい音を立てる。
何これ？ どういうこと？ ここ、どこ？
様々な疑問が頭の中を駆け巡り
言い様のない不安が襲いかかってくる。
まさか、私たち……誘拐された？
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年3月19日 9時
