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第20話宇宙よりも遠いイケメン中編③ ページ22

「そんなこと、無いです！！」
私は叫んだ。それは違う。絶対に違う。
「努力をしている人がかっこ悪いだなんて、聞いたこと…ないです…」

「はは……優しいなあ。嘘なんかつかなくたっていいのに」
「嘘なんかっ」
論先輩を見つめ直そうとして息が詰まったのは、多分論先輩の顔があまりにも悲しくて、流れる涙が美しかったからだろう。

「俺はかっこ悪いんだよ。あいつらの前ではあんな態度して、長七にはこんなこともできないのかとか強く当たって、それなのに」

「もうアイツに、抜かされてやんの」

「論、先輩…」
一瞬にして北極の寒さを思い出す。あぁ、あの光景が美しかったから、こんなにも忘れていた。
ふいに、元木先輩の言葉がフラッシュバックした。

______でもな、嫌わないでほしいんだ

「まあ明日から、仲間の前で虚勢を張ってるみじめな先輩としてみてくれよ」
「論先輩」
「…なぁに？」

「私は、仲間の前でかっこつけてる論先輩が苦手です」
「…うん」

「………でも、自分の努力を否定して、挙句自分で傷ついて、悲しい顔をする論先輩はもっと嫌です」

「…」
今度はしっかり見つめる。絶対に目を逸らさない。決めたじゃないか。

お腹いっぱいに、息を吸い込む。

「仲間の前ではチャラい不良なふりをしてても、夜中にこっそり自主練をするクソ真面目な論先輩は」

この思い全部を、解き放つ。

「めっっちゃくちゃかっこいいです！！！」

艶やかな髪が揺れたのが見えた。心底驚いた顔だ。様々な感情が心の中で入り乱れている。

そして次の瞬間、破顔する。

「バカなんじゃない？」

_________

「お～い朝だぞ～」
カンカンカンカンカン！

「朝ですよ～～！」
カンカンカンカンカン！

けたたましい音を立てながらみんなの敷布団の周りを三週する。
「うるっっっさ！！！」
「おはようございます。論先輩」
論先輩は眉間のしわを深く刻む。
「げっ」
それから少し気まずそうに目を逸らして、今度はいつもの顔で、

「今日もかわいいね～～Aちゃん」

と宣うのだった。