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「ウフッ。お礼はアリスちゃんに言ってあげて♪あの子はウチの船の整備士でね。船の操縦もお手のモノなのよん❤」
「お礼なんてとんでもねえがす。あっしはただ…ひっ！なんでえありゃ！」
ザアアアッと水の柱が水底からせりあがってくる。
「プギシャ―――――ッ！！」
水飛沫が飛び散り、海に咆哮が響く。
「イヤ―ッ！何よこの化け物イカ！いったいどこから湧いて出たの！？」
「クラーゴン…。こんな港の近くに？…まさか」
Aはハッとした表情で、今は見えないダーハルーネの港に振りかえる。
「ひいいぃっ！こっちに来るでげす！あっしはまだ死にたくねえでがすよ〜っ！」
クラーゴンが太い触手を船の先端に巻き付けた瞬間、ギシッという音とともに全体がぐらりと揺れた。
「きゃあっ！！」
グラグラと不安定な足場に足を取られて、視界がぐるりと反転する。
(おち…る…)
咄嗟に掴んだ柵で海に投げ出されそうになる身体を必死に小さな手で支える。
船が振動するたびに、ズルズルと身体が海に引っ張られていく。
「うぅ…っ！」
「イレブン！助けるぞ！」
カミュとイレブンが頷き、走り出す。
しかし、ぐらりと船体が揺れ、Aのもとへと行くことができない。
「も、ぅ……きゃっ！！」
ずるっと空を掴んだ瞬間、スローモーションのように身体が宙を浮き、ゾクッとした感覚が全身を駆け巡った。冷たい衝撃に瞼に力を込め、身体を小さく身構えた。
しかし、冷たい海水のねっとりした感覚も息苦しさも襲ってこなかった。
「ギリギリ間に合ったみたいだね」
聞き慣れた声に、固く閉じていた瞼を開ける。
思わず目の奥が熱くなり、温かな体温に胸の奥がきゅっと締め付けられるような感覚になる。
「し…ろえ、さん？」
自身の名前を呼ばれ、シロエは三白眼の瞳を緩くほそめて微笑んだ。
甲高い咆哮と風を切る翼の音が駆け抜ける。
「グリフォン…。」
シロエに抱きかかえられ、ようやく自身におきた顛末を知る。
「し、シロエさん！わたしっ…！」
「しっかり掴まってて」
シロエはAをグリフォンの背中に降ろすと、自身の胸にたぐり寄せるように両腕に彼女をすっぽりと入れる。シロエの体温を感じ、ドキッと心臓が跳ねる。が、シロエがグリフォンの手綱を掴み、一声咆哮が響くと、ゾッと鳥肌が立つような浮遊感に包まれた。
「えっ？…きゃあああ――――！！！」
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作者名：マナ | 作成日時：2020年1月12日 20時
