兄と弟２

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side智洋



智｢お、俺、先に風呂入ってくるな、｣



大｢おん。………神ちゃん、ごめんな。｣



脱衣場に逃げ込んで、ずるずると座り込む。



シゲは何に対してごめんと言ったのか。



どうしてこんなにも自分が狼狽えているのか。



……もういい大人やから、わかってる。



さっきの一瞬、



今までの関係性では居られない“感情”が二人の間に交わされたこと。



わかってるけど、頭ぐちゃぐちゃでわからへんよ。



シゲの視線に込められていたものが伝わったことにお互い気づいていて、



そして“今まで通り”を求めた俺にシゲは合わせてくれた。



謝らせたかったわけやない。



シゲにあんな悲しい顔させたくなかった。



でも今はまだ、きっと勘違いやと思ってる自分がいる。


だってシゲは好きな人がおる、って言うただけやし、俺はそれに驚いただけ。



普通に考えればそれだけの会話やった。



……それだけのはずやのに、シゲの握りしめた手は震えていた。



智｢…シゲ……。｣



ずっと、ホンマの兄弟みたいに思って生きてきた。



誰よりも近くにいて、シゲのことは何でもわかってるつもりやった。



阿呆やな俺。



ホンマは何一つわかってあげられてなかったのに。




子どもの頃からの大切な思い出たちが全部塗り変わっていくような切なさが胸を締め付けて、



泣きたくないのに涙が出る。



智｢……ごめんっ……。｣



学生時代に出来た彼女の惚気話をたくさんした。



恋の悩みもいっぱい相談した。



シゲに告白した女の子とお似合いや、って付き合うように言ったこともある。



シゲは相手にしなかったけど。



きっと知らないうちにもっともっとたくさん傷つけてる。



あのときシゲは何て言うたんやっけ？



どんな顔してたっけ？



思い浮かぶのは笑顔のシゲばかりで、



それが無性に悲しかった。

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