【星章学園】迷える羊 Ⅱ 【ヤンデレ】 (ページ1)

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第35匹キャップチャー・ゲーム(前) ページ1

「それでは！星章学園vs王帝月ノ宮、ただいまキックオフ！！」
ホイッスルがけたたましく鳴った。

「悪いが最初から飛ばすぜぇ！！」
灰崎が序盤から仕掛けにかかる＿＿＿＿はずだった。
「ッ！何！？」
灰崎の足元にボールはなかった。
まさか！
「悪いけど先制点は頂くよ」
野崎悠馬がすでに攻め上がっていた。
俺は奪い返そうと走った。
しかし俺たちを嘲笑うかのように、ゴールネットは揺れた。
「……速い」
だがこんなところで負けてはいられない。
星章学園のためにも、Aのためにも。
「Aは渡さない」
不意に零れた。

試合再開。
灰崎がDF陣を躱し突っ込む。
「オーバーヘッドペンギン！！」
こっちも一点返せるはずだ。

……そのはずだったが。
目の前の光景は俺の予想を裏切った。
キーパーは容易く左手一本で握っていた。
「この程度か」
「何だと！？」
自陣はざわついた。
そのままロングスローが出され、敵は素早く四方八方にパスを回す。
また攻められてたまるか！
すぐさま俺は野坂に立ちはだかる。
「キャプテン！！」
どこかでAの声がした。

あれ、なぜだ？
なぜ俺は芝生の上に倒れ込んでいる？
なぜか痛む腹を抱えて起き上り、見渡した。

隣に、Aが倒れ込んでいた。

「A！！」
雪のような銀の髪が人工芝に広がっていた。
「大丈夫か！？」
「……キャプテン、大丈夫。全然平気。」
美しい顔は苦痛で歪んだ。
「貴様ら！汚い真似をしやがって！」
隣で灰崎が吠えていた。
……ああ、そういうことか。
こいつら、わざと俺のみぞおちを狙ったな。
わざと、Aにボールを蹴ったんだな。

Aを傷つけたな。

「汚い？僕らは君達を弱体化させるためにみぞおちを正確に狙っただけだ。
勝利のための合理的判断だよ」
ふざけるな！
気づいた時には叫んでいた。
「キャプテン……」
「こんなことを＿＿冒涜(ぼうとく)をしていいと思っているのか！！」

Aを縛り付けた。
Aを長年苦しめた。
Aに近寄った。
Aをまた攫(さら)おうとした。
Aに物理的危害を加えた。
…………こんな蛮行、Aに対する冒涜でしかないだろう？

俺の中に存在しているのは、Aへの愛と目の前の奴に対する怒り＿＿もとい、憎悪だろう。