ある日、私にセコムができた【五条悟】

20話 ページ21

自分が "改めて" おかしいということに気がついたのはそれからわずか3日後のことだった。



人気のトーク番組に出演した時、







「幼い頃はよく何をして遊んでたんですか？」




その質問に私は記憶を巡らせたんだ。







『…………え？』




幼い頃………？





私が幼い頃……







……。





『…よ、よくお絵描きとかしてました〜。』





なんとか悟られないように笑顔を繕ったけど、心臓がドクドクとうるさい。




だって、



何も、思い出せない。









ただ頭に残っているのは



"あなたがいると家の空気が暗くなるのよ。"


"俺を信じろ。"











「…おーい。」


『……。』


「ちょいちょい、聞こえてます？オネーさん。」


『…なんですか。』






肩をつつかれた方を向けば、「だーって、何回話しかけても反応がないからさ。」とチョコレートを口に放り込みながら言う五条悟。





『私って……なんなんですかね。』





それは自分の意思に反して出た言葉だった。





「…ん？」


『呪いに好かれてるかと思えば、過去の記憶なんて嫌なものばかり。最近、私は自分がわからない。』


「なんかあった？」


『いや……………ハッ！』




五条悟のその言葉でやっと我に返った。


この人にこんなことを口走ってしまったってどうにかなる話じゃないのに。




絶対馬鹿にしてくる…………。




『すみません、忘れてください。』





一旦席を外そうと私は立ち上がると、それは隣に座る五条悟に腕を掴まれたことによって阻止される。




うわ…最悪。



絶対ニヤニヤしてんだろうな…なんて振り返れば、その顔に笑みなんて一切なかった。









『あの〜…』


「君、親のことは覚えてる？」


『覚えてるも何も………………あれ？』


「顔はどんなか覚えてる？名前は？
君は自分がどこで生まれたか言える？」


『ちょ、！いきなりなんですか…！』





突然の質問攻めに私は思わず五条悟に掴まれた腕を振り解いて距離を取るけど、それはアイツのデカい歩幅ですぐに埋められる。





「答えられるか聞いてんだけど。」


『どうしてそんなにピリついてるんですか。』


「いいから早く。」


『そんなの……』




すぐ近くで五条悟に見下ろされながら私は頭を回転させる。




そんなのすぐに……


そん、なの…






『……わからない。』


「何も？」


『…………何も、わかりません。』












「そういうことか……ﾁｯ。」

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