両片思いⅡ【Fischer's】 (ページ5)

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No.51 もどきじゃないデートもページ5

Silk side

ごちそうさまでした、と2人で手を合わせて言い、鞄を持ってレジへ。

因みに料理の感想を言うと、俺のとAのを一口ずつ交換したのだが、どちらも最高だった。

俺はレジで財布からお金を出してお会計をしてもらう。

『私のは自分で出すよ！』

シ「俺が誘ったんだしいいよ」

『でもお店は提案したの私だよ？』

シ「じゃあ今度勉強教えて。それでいい」

眉尻を下げて困り顔のAを横目に、俺は受け取ったお釣りとレシートを財布にしまう。

シ「ま、たまにはカッコつけさせろ」

『……いつもかっこいいもん…』

シ「そーゆー話じゃねーの！」

そんなやり取りをしていたら、レジ打ちをしてくれた店員さんに「優しい彼氏さんですね笑」とAが言われた。彼女は苦笑いの顔をほんの少し赤らめて否定の言葉を口にする。

『いえ、ただの友達ですよ…笑』

そう聞いた店員さんは驚いたように「すみませんっ」と頭を下げた。Aは必死に頭を上げるように頼んでいる。

その彼女の目に悲しげな色があるように感じて、俺はそっと目を逸らした。

レストランを後にして俺たちは家路についた。

普段通りの振る舞い方をするAだが、俺はさっきの彼女の瞳に映った悲しみの色が頭から離れない。

『シルク、レストラン出てから変だよ？……やっぱり私の分のお金、自分で払＿＿＿』

Aは財布を取り出そうと鞄を漁る。俺はその手を掴み、

シ「違ぇ。あれは俺が払うって言っただろーが」

『じゃあ何で…？』

シ「……さっきの店員さんにカップルだと思われて、お前が悲しそうだったから…」

Aは一瞬驚きに目を見張って、すぐに微笑んだ。

『そりゃあ…まだシルクと付き合えないのは悲しいけど。でもそんなに急かすこともないし、ゆっくりでいいの！』

俺だって全く考えてない訳では無いが、そう簡単に出せる答えではないのだ。

シ「……まだ、Aは俺にとって友達だ。すげぇ大事な友達の一人」

それでも笑顔を崩さない彼女は強い。ふとそう思った。

『ねーねー、今度デートしよっ！』

シ「デートって……お前今の俺の言葉聞いてたか？」

『次はどっか遊園地でも行く!?』

シ「聞いてねぇし。……いつか、な。てか“次は”って今日のはデートじゃねぇって!!」

『ほぼデートですぅ〜！』

Aはべっ、と小さく赤い舌を出して、「じゃあね」と分かれ道で大きく手を振って背を向けた。

シ「次って、いつだろうな」

俺は無意識のうちにそう呟いていた。