両片思いⅡ【Fischer's】 (ページ20)

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No.65 カラミアイページ20

You side

電車に揺られながら、私はそっと目を閉じた。

別に眠たい訳じゃない。色々と頭の中がしっちゃかめっちゃかで、思考だけでも1人になって、考え事をしたかった。

シルクはずっと何か話したがっていた。昨日のことについて話さなきゃいけないことがあると。だけど何を言われるかわからない恐怖から、ずっと逃げ続けていた。

何を言おうとしてたのか、私にはわからない。怖くて、知る勇気がない。でもそれはきっと、シルクの優しさだったんだと思う。

だから、それを知るのが怖い。

“好き”という気持ちは本当に一方通行だっただけで、彼の言動に期待していた私がバカだっただけなのかもしれない。

“ごめん”

その事を思うと自然と零れた言葉。

シルクに自分勝手に想いを伝え続けて、迷惑をかけ続けていたのだろうか。でも、だとしたらなんで……

＿＿＿＿なんで、キスなんてするの？

あの時何かが唇に触れた感触がした。昨夜のあの瞬間を思い出す度に、その感触が蘇るように感じる。目を閉じている今は尚更。

初めて、だったのにな。それも好きな人と。嬉しかった、本当に嬉しかったのに。

“身体が勝手に”とか“する気無かった”とか、本音だとしても言わないでほしかった。やっぱり届かないんだって改めて自覚しちゃうから。

……って、やっぱり私我儘だ。だから、だから私は＿＿＿

考えたいことが多すぎて、出したい結論が見つからない。思考がまとまらない。悲観的なことばかり浮かんできて涙が込み上げてくる。

ただずっと心の中心にあるものは、“シルクに嫌われたくない”ということで。

シルクの気持ちが離れていってしまいそうで、どうにか縋りたくて、隣に座っている誰かの手を握る。

シルクじゃないメンバーの誰か。それは確かだ。それが分かればもういい。

その手も私の手を握り返してくれた。それで十分だ。

＿＿＿＿ねぇ、まだ好きでいてもいいですか？

•*¨*•.¸¸☆*･ﾟ

Masai side

海の帰り、電車の中で暇を潰すためにスマホを弄っていた俺は、突然のことに思考が追いつかなかった。

Aが俺の手を握っている。

何事か、とスマホなんてそっちのけで彼女の顔を覗き込むと、今にも泣きそうな表情で。

今日Aの様子が変だったのは見てて明らかだった。そしてその原因もまた明らかで。

＿＿＿＿なぁ、俺にしろよ。お前のこと泣かせるようなやつじゃなく、俺に。

そんな思いを込めて、彼女の手を握り返した。

強く、優しく。