両片思いⅡ【Fischer's】 (ページ15)

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No.60 潮の香りに置いていかれて⑥ ページ15

Silk side

手足が疲れて動かなくなるほど遊びまくり、遠い水平線にはもうすぐ夕日が帰ってしまう。海水は橙色に染まり、俺達も片付けと着替えを済ませて宿へ向かうことに。

マサイが予約してくれた宿は評判も良く人気らしい。そのため部屋が2部屋しか取れず、俺たちは男5人1部屋で泊まることに。

シ「流石に狭くね？w」

マ「でもAと同じ部屋に誰か泊まる訳にもいかねぇだろw」

『私は別にいいけど……』

Aの言葉にみんな声を揃えて「よくねぇよ!!」と反論。それに彼女は頬を膨らませるが、こればかりはダメだ。

宿は海から比較的近く歩いて行ける距離だという。

『じゃん負けがみんなの荷物持つやつやろうよ！電柱3本交代で！』

そんな提案をするAにお前は小学生かとツッコミたくなるが、同じく子供っぽいンダホも賛成し仕方なくやることに。

そして当然言い出しっぺが最初に負けるのだ。

『重いぃ……！』

そう遊びながら歩く道中はとても早く過ぎる。いつの間にか宿に着いておりマサイがチェックインを済ませてくれた。

『じゃあ後で行くね！』

部屋は隣同士。Aに修学旅行の時みたいだなと声をかけようとするも、肝試しの時の泣いた彼女を抱きしめた記憶が蘇り声にはならなかった。

ドアが閉まるまで見送り俺達も隣の部屋へ。男5人では狭いかと思っていたが部屋は案外広く、俺たちでも十分広々寝れそうだ。

ン「すげー！窓から海見えるよ！」

ザ「ほんとだー！」

モ「おぉー、綺麗だね」

昼間の海とは別の綺麗さがあった。歩いて行き来できる距離だから、後でランニングで海まで行こうかな、なんて考える。

その後荷物を整理している途中でAも来て一緒に夕食を食べた。やっぱり修学旅行みたいだと思ってしまうのだが仕方ない。食後にはみんなでゲームをして盛り上がった。

シ「俺ランニング行ってくるわ」

『あ、私も行く！』

シ「え、お前もランニングとかすんの？」

『やってみたい』

宿を出た俺達は海まで行くことになりさっきの道を戻り走った。

シ「ペース平気か？」

『…ん、』

シ「…ちょい落とすか」

体育祭練習の時みたいに倒れられては困る。

シ「お前運動神経いいくせに体力は無ぇのな」

『まぁ…。中学の時体弱くて入院してて』

シ「あんま聞かない方がいいよな、悪ぃ」

『んーん。今はもう元気だし』

そう言うとAは俺の手を取って、

『シルクが手引いてくれれば、さっきのペースでも平気かも』

そう悪戯に笑った。