ホリック -izw- ページ10
明るいお話ではないです。
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終電まで残り30分。
俺はオフィスでその時を待っていた。
「伊沢さん、お先に失礼します」
「あ、俺ももう帰るから戸締り一緒にしてくれない？」
来た、やっとこれで目標が達成される。
俺は窓の鍵を確認する彼女の背後にゆっくり近づくと、口元に薬を仕込ませたタオルを充てた。
彼女はそのままガクッと意識を失った。
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重い瞼を開けると、ベッドと小さな机と椅子だけが置かれた、窓の無い5畳程の部屋にいた。
そして右足首にはチェーンの付いた枷が嵌められている。
一気に寒気がする。私はもしかして監 禁されたのだろうか。
一体誰に？さっきまでの記憶をまだぼーっとする頭に取り戻す。
そうだ、オフィスから帰ろうとしていた。それで伊沢さんに引き止められて、それで…。
私の記憶はそこで止まっている。
伊沢さんが犯人？そんなことあるはずがない。
とにかくここから出なければと思い、ベッドから立ち上がりドアの方へ向かう。
が、ギリギリ届かない。チェーンのせいでドアに少しだけ届かない。
手を伸ばせばドアノブには届くが、外には出られない。それにどうせドアも開かないだろう。
絶望的なこの状況に泣きそうになったそのとき、ガチャとドアの鍵が開く音がした。
やはりドアには鍵がかかっていたと思ったと同時に、私を閉じ込めている犯人と対面するという恐怖に怯える。
「おはよう、Aちゃん」
部屋に入ってきたのは、伊沢さんだった。
よく顔の見知った人で安心する一方で、あの伊沢さんが犯人だという事実に怖くなる。
「朝ごはん作ったんだけど、食べれる？」
立ちすくむ私を他所に話を続ける。
確かにお腹は空いているが、この状況で出されるご飯は食べたくない。
でもこのまま一生何も食べられないで餓死するよりはマシなのか、と考え出すとキリがなくて。
私は伊沢さんの作ったご飯を食べることにした。
「何も入っていないから安心して」
机の上に洋風な朝ごはんが出される。
記憶が正しければ昨日の夜から何も食べていないので、その匂いに釣られ私は椅子に座った。
伊沢さんはニコニコしながら部屋から出ていった。
何かを企んでいるような顔だったと思うのは、ご飯を食べ終わった後のこと。
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作者名：ヱ崎 | 作成日時：2022年11月1日 16時
