クラウン -sgi- ページ7
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バイト先の人に片想いをしてもうすぐ1年。
知り合いの紹介ですることになったバイトは動画編集が仕事だった。
YouTubeでよく見かけていた人達がいるような職場で私は、8つも歳上のCEOに恋をした。
どう考えても叶う訳がない。
でも少しでも話せるだけで嬉しくて、見ているだけでいいやって思えてしまう。
そんな中、それじゃダメだと背中を押してくれているのが更に3つも上の須貝さん。
YouTubeに出ているメンバーの人達と関わることなんてないと思っていたのだが、ひょんなことから私が伊沢さんのことが好きだと知った須貝さんは、何かと協力的なのだ。
今日もオフィスで作業をしていると、須貝さんがひょこっと顔を覗いてきた。
少しびっくりして体が跳ねる。
「伊沢、これから来るってよ」
たまたま空いていた隣の席に座り、耳元でボソッと言う須貝さん。
普段はマイクの音を他の人より下げられるくらいに声が大きいのに、こういう時は気を使ってくれているのだろう。
「…そうなんですね」
「一緒に話しかけに行こうよ」
どう反応していいか分からず、少し冷たくなってしまったが、きっと須貝さんは私が内心嬉しがっていることなんてお見通しだろう。
だから、話しかけに行こうって誘ってくれたのだろう。
でもいくら須貝さんと一緒とはいえ、話しかけるのは怖い。
学生アルバイトからしたら雲の上の存在なのだから。
「すみません、やめておきます」
「そっかぁ。伊沢も喜ぶと思うけどなぁ」
何がどうなったら、私が話しかけて伊沢さんが喜ぶのか。
こんなことを言ったら失礼だけど、あまり適当なことを言わないで欲しい。
単純な私はそれで一喜一憂してしまうのだから。
「そういえばさ、もうすぐクリスマスだけど、予定とかあったりするの？」
黙りこくる私に、話題を振ってくれる。
好きな人がいるので普通に恋人がいない私は、今年も友達と適当に過ごすのだろうが、決まった予定はない。
きっと須貝さんのことだ、伊沢さんをデートに誘えとか言うんだろう。
「特にないです」
「じゃあ、伊沢誘えば？」
やはり。私にはそんな勇気ないというのに。
モブの私は見てるだけで十分なのだ。
「大丈夫、誘ってみよう」
再び黙る私に須貝さんは優しい声で言う。
11も違う私を子供だと思っているかのような、赤ん坊をあやす様な声。
私の受け取り方の問題なのだろうけど、少しムカつく。
まるで私なんて伊沢さんの眼中にもないと言われているようで。
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作者名：ヱ崎 | 作成日時：2022年11月1日 16時
