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Aは、無表情ながらも一点を見つめ僅かに眉根を寄せる。
思い出そうとしても記憶の糸口すら出てこない。
朝目覚めてすぐさっきまで視ていた夢が思い出せないような、むしろ赤ん坊の頃のことなんて誰しもが覚えていないような。
名前はわかる。死柄木たちに呼ばれ続けたから。
けれど名字はわからない。
制服を着ていた。新品の冬服だった。
この世界に来て血やら砂やら随分と汚れてしまったから、もともとがどんな色だったかなんてわからないけれど。
十六年しか生きていないのにと絶望した。だからきっと高校生。
両親はまあ、居なければ自分は生まれていないのだから居たのだろう。けれど在否はわからない。
兄弟はどうだっただろうか。
家は広かった気もするし、狭かった気もする。
住宅街かもしれないし、山間だったかもしれない。
本当にまるっきり思い出せないから、思い付くこと全てが「そう」である気がするし、だからこそ違うとも思う。
普通の人間だったのだから、友人だって居たはずだが、その名前は疎か、顔も、ましてや性別すらわからない。
そもそも「きっと居たであろう」くらいの推測でしかない。
答えに窮するAにどう思ったのか、ミッドナイトは追求しなかった。
「じゃあ、ヴィラン連合との関係は？」
(……連合は……)
「……先生がわたしを拾ってくれて、そこが連合の母体、で……」
少し思案するものの、それを表す適切な表現が浮かばなかったのでとりあえず「はじまり」から言葉にする。
そうすることで関係は自ずと見えてくる気がしたからだ。
「……ぁ、
事実、言葉は見つかった。
拾われたとはいえ「保護」とも言い難く、対等ではないため「仲間」でもなく、従者というには忠誠がないため「従属」でもない。
その言は「絶対」で、A自身に意思はなく、使えなくなったら廃棄される。
客観的に見てまさに隷属する者そのものだと思ったのだ。
(ああ、そうか)
それならばこれは仕方のないことだったのだ。
棄てられたくないなどと喚いても、そもそも道具に意志は必要なく、権利などないのだから、喚いて暴れて主人等の邪魔をする不良品を廃棄するのは自明の理だったのだ。
つまり、当たり前のことをしただけの彼等は悪くない。
Aは、無様でもしがみつきたかった唯一の居場所を自分で亡くしたのだ。
(わたしは、救い様のない、正真正銘ただの粗大ごみだ……)
そしてAはピクリとも動かなくなった。
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詞葉(プロフ) - 蓮さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです！ 何分遅筆なものでお待たせすると思いますが、是非よろしくお願いします。 (2020年3月12日 12時) (
レス) id: dc1dd40e5c (このIDを非表示/違反報告)
蓮(プロフ) - とても面白いです…！更新楽しみにしてます！ (2020年3月11日 1時) (レス) id: 0d837f5408 (このIDを非表示/違反報告)
詞葉(プロフ) - 桜猫さん» コメントありがとうございます。ちょっと迷走しつつあるので気長にお待ちいただければと思います。いただいたコメントでモチベ上げて頑張りますね！ (2019年9月2日 23時) (レス) id: df44a89d14 (このIDを非表示/違反報告)
桜猫(プロフ) - 夢主ちゃんの今後が気になりますな… (2019年9月2日 17時) (レス) id: b3a762d464 (このIDを非表示/違反報告)
詞葉(プロフ) - ルーさん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです！ 仕事の合間にぽちぽちするのでゆっくりになりますが、ハピエン厨なのでそうしたいと思っています。 (2018年2月8日 17時) (レス) id: 703ce966a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詞葉 | 作成日時：2017年10月7日 13時
