今度は。 ページ17
中也side
「A、何飲む?」
「カフェオレ!」
「本当にAはカフェオレ好きだなぁ」
そう、笑った。
Aはもうほとんどの記憶を失ってきている。
でも、カフェオレが好きなのはずっと変わらない。
カフェオレだけじゃない。
孤児院で働き続けて、
『1人でも多くの人に幸せになって欲しい』
と言うのも変わらない。
もっと言えば、喋り方も、歩き方も、笑い方も、よくソファで寝落ちするのも変わらない。
なにも、変わっていない気がするのだ。
過去のことを覚えていないから、前まで分かっていたお皿の場所や、照明のスイッチの場所を聞かれることはあるが。
それでも、AはAのままだった。
ただ1つ、変わったことと言えば、外をボーッと眺めることが多くなった。
いつの間にか、泣いていることもあった。
自分がじきに全ての記憶をなくすことを、なんとなく悟っているんだろう。
そんな時は、俺も一緒に外を眺めた。
Aはヨコハマの海を眺めていることが多かった。
―――――ヨコハマの海が見える場所が良いな…
まるで、この同棲生活が、自分がそう言って始まったことを知っているかのように。
海を一緒に眺めながら、沢山のことを思い出した。
Aと出会った瞬間、あの真っ黒な瞳に光が灯ったこと。
Aの異能力が暴走したこと。
Aの寝顔を初めて見たときのこと。
Aの複雑な過去の話を聞いたこと。
Aとハプニングでハグしたこと。
Aが記憶をなくすと知ったときのこと。
他にも、初めて出かけたこと、キスしたこと、共に夜を過ごしたこと。
沢山の幸せな思い出が蘇った。
思い出話すら、もう出来ない。
でも、記憶を失うことが全て悪いとは思わなくなってきた。
Aが記憶を失うと言うことが分からなければ、きっと同棲すらしてなかった。
それに、記憶を失えばAが過去の記憶に囚われて苦しみ続けることはなくなる。
それと、Aと出会ったとき、Aは既に俺のことをよく知っていた。
俺は、Aのことは名前しか知らなかったのに。
でも、今は俺の方がAの事を知っている。
段々逆転していく立場に悲しさと同時に親近感も感じていた。
Aが記憶を全て失ったとしても、きっと、俺たちはまた1からスタートするだけだ。
きっと、何も失わない。
今度は、お互いの名前を、お互いに言うことから始まるんだ。
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nao - 私情はさみます……すいません、覚えてるかな、うちのことmaoです、これ見てくれてたら嬉しいです、そして返信くれると嬉しいな……… (2020年9月29日 23時) (レス) id: cb11543b97 (このIDを非表示/違反報告)
きおく(プロフ) - やっぱりハッピーエンドですよね…!!分かりました!!夢主ちゃんも中也も幸せにします!!コメントありがとうございました!!! (2019年9月26日 17時) (レス) id: 8fb2214b40 (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - ハッピーエンドにしてあげて下さい!! (2019年9月26日 17時) (レス) id: 2eff2af79a (このIDを非表示/違反報告)
きおく(プロフ) - なるほど…!!ありがとうございますー!!! (2019年9月24日 18時) (レス) id: 8fb2214b40 (このIDを非表示/違反報告)
れいな(プロフ) - 私はハッピーエンドがやっぱりいいです! (2019年9月24日 12時) (レス) id: 11efb22fa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きおく | 作成日時:2019年7月22日 18時