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玖拾壱 ページ23





『……義勇さん』


優しく、義勇さんの名前を呼んだ私はそれ以上何も言わず、義勇さんが俯いた顔を上げてくれるのを待つ。暫くしてゆっくりと顔を上げ、私を見た義勇さんの表情を見て、私は驚いた。

その瞳にはうっすらと涙が浮かんでおり、もう限界ギリギリだとでも訴えるようで。それでもそれを我慢しようと、義勇さんは必死に唇を噛んでいて。


『……ッ』


義勇さんがどれだけ寂しい思いをしてきたか、どれだけ我慢をしてきたか、それを理解するのにもう言葉はいらなかった。


『…義勇さん、もう…我慢しないで、ください』


そう言って、私は義勇さんに向けて両手を広げる。


『……泣いても、いいんですよ。
今ここには、私と…貴方しかいない、ですから』


正直、義勇さんがこんなにも弱っている姿を見るのは初めてだった。涙を流すところなんて、見たこともなかった。だからその分、甘やかしたくなったのかもしれない。

此処が蝶屋敷であることも忘れて、いつしのぶちゃんや他の子達が来るかもわからないこの状況でもいい…今は思い切り、感情を表に出して欲しかった。


にっこりと微笑んで、まだ少し戸惑っている義勇さんを見つめていると、恐る恐るといったように義勇さんはゆっくりと私の腕の中に入ってくる。

そしてその瞬間、私は義勇さんの背中に手を回してその体を抱きしめた。これまで何度も責任やプレッシャーに押し潰されそうになって、落ち込んでいた私に義勇さんがしてくれていたように。


「……A…ッ」

『…なんですか、私は…此処に、いますよ…』

「…頼むから、死なないで、くれ……
俺の隣に……ずっと、いてくれ…」


少し震えているその背中をゆっくりと撫でながら義勇さんの言葉を聞いていた私だったけれど、すぐには頷けなかった。

私も鬼殺隊で柱として、戦線に出ている身。
死なないでくれ、なんて言われてもいつ命を落とすかわからない仕事をしている。

だから、簡単に返事をしてしまうことに戸惑ってしまったが、今義勇さんにかけるべき返事は決まっている。


『……仰せの、ままに』


私だって、出来ることなら義勇さんにはずっとずっと生きていて欲しい。少なくとも、私より先には死んで欲しくない。

でもその願いが、叶う保証はどこにもない。

だけど、こうして言葉の上だけでも約束をするだけで、不思議と落ち着ける時はあるのだ。



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Luccica6(プロフ) - あたしもリアタイで見ましたよ!見逃しではスクショいっぱい撮りたいです!義勇さんの表情がとっても豊かで面白かったですよね!義勇さん推しにはたまらない!! (8月25日 8時) (レス) id: 0e0c076021 (このIDを非表示/違反報告)
空讃岐 - 分かります!私もアニメをリアタイで見ました!私も義勇さん推しです!私もぎゆしのは地雷です。でも、恋愛じゃなくて仕事仲間としてなら大丈夫なんですけどね(笑) (8月25日 3時) (レス) id: 0f3cd23380 (このIDを非表示/違反報告)
無一郎と義勇が可愛いくて仕方ない隊(プロフ) - 顎の骨割れるw (8月25日 1時) (レス) id: 774efab444 (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - カナヲちゃんの容赦ない蹴りで凄い笑ってしまいました.w (8月25日 0時) (レス) id: 5d24f2ef59 (このIDを非表示/違反報告)
無一郎と義勇が可愛いくて仕方ない隊(プロフ) - 来週私、テスト勉強で、見れないんです。つらい (8月25日 0時) (レス) id: 774efab444 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:3℃ | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/docee_3  
作成日時:2019年8月20日 14時

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