離れない光【アンナチュラル】 (ページ10)

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北瀬Aside(10年前)

「助けて下さい･･･」

濡れた睫毛が触れ合う

見上げればすぐに瞳がかち合った

優しく指の腹で零れた涙に触れられる

ただただ目の前の人は、私を見つめていた

図書室に入り浸るようになり約1年

先輩と呼ぶ人と同じ制服を着るようになった

･･･私を、ある事件が襲い、１ヶ月経っていた

病室で、カーテンの隙間から外を覗き見ていると、見知った顔が立ち止まり、逡巡した様子で、離れていくのが見えたのだ

思わず、名前を読んでいた

ぐずぐずと鼻を啜る私を、じっと見つめている

「･･･A」

何度か名前を呼ばれた

部屋に2人、扉の前で向かいあって、既に随分経ったと思う

ずっと泣いていたせいか、

なんとも言えない熱気が部屋という密室に籠っていた

呼ばれていることに、ようやく脳が反応した

おそるおそる顔を上げると、両頬を大きな手に包まれる

「A、

大丈夫です

僕が、守ります」

切なげに、眉尻を下げている先輩

思い出す

柔らかい肌を爪が食い込む程に掴まれ、男の人特有のゴツゴツした感触が、熱と共に肩に伝わっていく

そして、

至近距離でマジマジと見つめられ、

走る激痛

泣き喚く私、

『君は" "にしたよ』

その言葉の意味は、今も分からないまま･･･