子狐予防接種を受けます後篇 番外編 ページ32
自分の腕と脇腹の間に顔を隠して震えるAに鬼灯は名前を呼びかけた。
｢Aさんは立派なお姉さんなんですから、
注射なんて大したことないですよ｣
声をかけられ、Aはゆっくりと顔を上げて鬼灯を見上げた。
見上げる表情は不安で涙目になっている。
｢……鬼灯様はお注射で泣く子は嫌ですか？｣
｢どちらかと言うと、注射くらいどうってことない方の方がいいですね。
自分で怖がらせるのは好きですが｣
Aはキュッと鬼灯の着物を掴み、｢あのね…｣
と鬼灯を手招きして
顔を近づけた鬼灯の耳元で小さく囁く。
｢お注射で泣かなかったら…鬼灯様のお嫁さんにしてくれますか？｣
不安そうにしていた時から変わり、決意をしたような表情に
その小さな頭を撫でながら
｢いいですよ｣
と鬼灯は返事をした。
桃太郎が戻ってすぐにAは呼ばれ、
励まされながら注射を打たれた時
ぐっと涙を零さないように堪える姿に桃太郎は成長を感じ、沢山褒めた。
シールを貰って出てきたAは待っていた鬼灯へ
｢約束忘れないで下さいね｣
と笑った。
｢採血怖いぃぃ…｣
｢すぐ終わるって｣
新人看護師への採血指導でアヤメがAを使ってお手本を見せる。
｢散々あんたを慰めた挙句に婚約しましたって…
心配した私の為にも協力してよね｣
｢う…経緯を聞いて爆笑してたのは誰よ…｣
｢終わったらシールあげる｣と笑うアヤメに
｢今更シールなんて……｣
言いかけたAは数秒止まった後に
｢ああああああ！！｣
と大声を上げて立ち上がった。
それに新人看護師とアヤメは驚いて身体が跳ねる。
｢何よ！危ないでしょ！！｣
｢思い出した……｣
｢ようやく思い出したんですね｣
仕事終わり、まだ書類の仕事を行っている鬼灯の元へと訪れ、
約束の件を思い出したことを告げた。
｢忘れないでと言った方が忘れるなんておかしな話ですよね｣
｢あんな感じで交わした約束を守ろうってのが変わってます｣
鬼灯は書類を片付け、台車へと載せていく。
｢私、割と約束守る方なんですよ｣
｢知ってますよ。どんな形かは別として｣
書類を積み終えた台車に手を添え、
鬼灯はAの方へと振り返った。
｢今日はもう仕事を終えたので、
最近出来た甘味処に行きませんか。
一子と二子に強請られていまして｣
｢わあ、行きたいです｣
｢それでは待っていて下さい｣
と鬼灯は台車を押した。
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鈴(プロフ) - とーとばっくさん» 読んでいただき、ありがとうございます。自分のペースで更新頑張りたいと思います。 (2020年7月20日 15時) (
レス) id: b29c9bf4f3 (このIDを非表示/違反報告)
とーとばっく - とても面白かったです!これからも無理のない程度に更新頑張ってください!応援してます! (2020年7月20日 6時) (レス) id: 10c7904400 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十五
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時：2020年7月2日 3時
