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子狐想いを断ち切ります。 ページ24

「ご結婚おめでとうございます」

その言葉と共に涙を流したAにその場にいた皆は驚き、

身に覚えのない鬼灯は理由を聞こうするより先にAが言葉を続ける。


「たぶん、ここにいる皆は知っているんですよね。

 …他の方には口外しないので安心してください」

「一体何を…」

立ち去ろうとするAの肩を鬼灯が掴もうとしようとした時、

Aは掴まれるよりも先にパンッとその手をはたいて鬼灯を睨み上げた。


「お願いですからこれ以上貴方に恋心を抱く私の心を乱さないで下さい」


溢れる涙は止まらずに頬を伝って床へと落ちていき、

言い切ったAは一度深呼吸をして鬼灯に笑顔を向けた。

いつも表情を変えないその顔が驚いたような反応が伺え、どこか優越感がある。



「貴方に寄せていたこの愛慕、今日で終わらせます。

 幸せを祈っています」



その言葉の後に走り去ってしまったAを見て、その場にいた者は皆鬼灯へと駆け寄った。

「鬼灯様追いかけて!」

「Aちゃん何か誤解してるみたいよ」
鬼灯の様子がおかしいことに気づき、改めて観察すると…


「…固まってるな」

「予想外過ぎる出来事に鬼灯様がフリーズしてる」









「わっ!何!?」

医務室の給湯室にいたアヤメにAは飛びついて縋る。

様子が違うAに「何かあったの?」と聞くと小さく

「おめでとうって言えたよ」

と伝えた。

グスッスグッと涙をすする音にアヤメの両手が背中と頭を撫でる。

「頑張ったね」

嗚咽は静かに給湯室の中で響いた。








鬼灯様、私は最高の笑顔で向き合えていましたか?









「桃太郎、Aいる?」

桃太郎ブラザーズは極楽満月へと赴き、桃太郎にAの所在を尋ねた。

「いるけど…何かあったのか?

早退してきてずっと部屋に篭ってるし…」

「実は…」

ルリオが今日あった出来事を説明すると、桃太郎はなるほど…と納得した。

「それで誤解を解きに来たんだよ」


「ごめんけど、今日は帰ってくれるかな。

こんちゃん寝てるし、今話してもまともに聞き入れるかわからない」

そう伝えたのはAの部屋から出てきた白澤であった。

「こんちゃんの事は薄々気づいてたよ。気に食わないけどさ」

桃太郎も出直した方がいいという事に賛成し、シロ達はその日は帰ることにした。

「明日も仕事来るだろうし、その時でもいいよね」




しかし、次の日もその次の日もAが出勤する事はなかったのであった。

子狐と泣き疲れて迎えた朝。→←子狐と言葉。



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(プロフ) - とーとばっくさん» 読んでいただき、ありがとうございます。自分のペースで更新頑張りたいと思います。 (2020年7月20日 15時) (レス) id: b29c9bf4f3 (このIDを非表示/違反報告)
とーとばっく - とても面白かったです!これからも無理のない程度に更新頑張ってください!応援してます! (2020年7月20日 6時) (レス) id: 10c7904400 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十五 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php  
作成日時:2020年7月2日 3時

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