【ぬらりひょんの孫】糸繰草 肆【初代】

我らの正体 ページ6

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陰陽師同士の戦いというのは、前世を含めても初めて見た
式神が交戦し合う、何とも現実離れした光景だ

流石転校生というのだろうか
数体の式神を同時に操るとは並外れた精神力だ

人でありながら人あらざる力
陰陽師とは言うのは人を救う立場だからこそ受け入れられているがこれが害するものとなろうものなら魔女狩りのように世間から痛い目に遭うのだろう
今の、私たち妖怪のように



「ゆら…偽りの言葉にまどわされすぎだぜ」



戦う最中、黒髪の小僧は転校生を何度も偽りの言葉で騙し攻撃を仕掛けた
そしてまたしても騙された転校生はその隙に間合いを詰めた小僧に殴られる



「けーかいんさん！！ひどい…何もそこまで…
あんたお兄さんじゃないのか！？」

「キレイごとぬかすなよ妖怪のくせに」

「……」



リクオはそう言葉を返され、苛立ったのだろう
いつもの優しい顔ではなく不機嫌なものに変わっている



「…貴様は随分と妖怪に偏見を持っているようだな」

「偏見？一体どこが偏見だと？妖怪は人に害をなす悪だ」

「まるで、馬鹿の一つ覚えだな」

「なんだと…？」

「それより、転校生。大丈夫か？」



話にならん。と鼻で笑い捨て置いた
転校生を気にかけてやれば地に伏せていた転校生はのそのそと起き上がり始めていた



「だ…大丈夫や。奴良くん、桜夜さん…」

「花開院さん」

「私は…餓狼なんかに…喰われたり(・・・・・)せんよ」

「……餓狼に…喰われる？何を言っている？
そんな芸当こいつに出来るわけないだろ？」

「え？」



その次の瞬間、ゴポッと転校生の口から水が溢れ出す
溢れ出るそれに転校生も驚き、話そうとするも水が出てきてしまいまともに言葉も出ては来なかった



「ゆら…お前は言葉そのものにふりまわされすぎだ。
いいか…オレは"餓狼" "喰らえ"としか言ってない。
本当は言うなれば"餓狼を喰らえ"だ…
しかし敵は餓狼と聞いて攻撃型の式神を想像する。
敵に偽りの言葉を与え…
そのイメージで敵を縛るんだ」



小僧は説教のように苦しむ転校生を他所に話を始めた
転校生は恐らく苦しさでそんなこと聞こえてはいないだろう
そして、小僧は攻撃を完成させると転校生は立つことなど出来ずにまた倒れた



「式神を使いまくることが陰陽師の業ではない。
学べよゆら…言葉で操る事も立派な陰陽術！
だからこんな奴らに振り回される。言言は苦しいだろう？」



何が、苦しいだろう？だ
私は、無意識に顔をしかめる


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