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予想外の言葉 ページ40

俺と、もう一人の『俺』の言い争いは止まる気配がなかった。

――お前はただ、嫉妬しているんだ。
  Aの笑顔が自分じゃなくて、ダイゴさんに向けられるのが嫌なのだろ?

その通りだ。あいつを独占したい。
誰かにAを取られるくらいなら、このままAを閉じ込めていたいと思わない訳じゃない。

――お前のやろうとしていることをやると、きっと後悔する。
  Aの笑顔が見たいんだろ? 自分でその機会を壊してどうする。

今言ったとしても、きっとAはもう二度と俺に笑顔を見せてくれない。
俺を信用してくれなくなる。俺を憎む。俺から離れていく。

もういいんだ。俺はあいつに恨まれながら、あいつと別れてもいい……。

――結局何がしたいんだ。お前の考えに一貫性が感じられない。
  Aをどうしたいんだ。強くしたいのか。壊したいのか。守りたいのか。

わからない。俺にはわからないんだよ……。


「アラン、これってどうやって飲めばいいんですか?」

コップ一杯の水を手にしたAがすまなそうに問いかける。

ここで教えなければ、Aはいつも通りでいられる。俺は代表を裏切ることになる。
ここで教えれば、Aは破滅する。

「…………」

――お前はどっちを選ぶんだ。

代表か、Aか。

悪人か、未遂者か。



「……ごめん、A。その薬は、危険なものなんだ」

「…………」

Aがきょとんとして俺を見つめる。

「それを使うと、お前はいつものお前でいられなくなる。副作用がきついんだ」

平常心を保とうと、泣きそうな声を隠そうとしたが、完全には無理だった。
声の震えが自分でも分かる。

「…………」

Aは微動だにしない。
そうだよな。ショックだよな。

Aは俺に近づいて、俯いている俺の顔を覗き込もうとした。

怒る、よな。憎い、よな。

「……アランは、どうしたいんですか?」

やっとAが発した言葉は、予想外の温かさを持っていて。

思わず狼狽する姿を見せてしまった。

「あ、え……? お、お前こそ、どうなんだ……」

とっさに出てきた言葉に意味はない。ただのやり過ごしだ。
俺には明確な答えが出せていないことを知られたくないから。

「私は、どっちでもいいですよ。どんなに辛くても、アランが選んだことなら耐えてみせます」

Aは自信をたっぷり含んだ顔で言う。

「お前……」

俺の言葉を途切れさせたのは、場違いと思うほどのAの眩しい笑顔だった。

最期の瞬間は→←大切なことは話せないまま



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設定タグ:ポケモンXY , 最強メガシンカ , アラン   
作品ジャンル:アニメ
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エビピラフ - すごくすっごく面白いです!!それに、キュンキュンしますね〜。これからも更新頑張って下さい!!! (2016年8月8日 1時) (レス) id: 44e702c603 (このIDを非表示/違反報告)
リオン(プロフ) - カレーオムライス…とてもおいしそ〜とても食べたくなってきました! (2016年8月6日 11時) (レス) id: 6bba43ef19 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 良かった。アランは、主人公に薬を飲ませなかった。安心しました。((o(^∇^)o)) (2016年8月4日 5時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 駄目。飲んじゃ駄目。その薬を飲んでしまたら、主人公は、壊れてしまう。アラン止めて。 (2016年8月2日 20時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 黒乙女ありすさん» コメントありがとうございます! 主人公の考えとしては、『本当に美味しいカレーなら、飽きなんてこない』ってことなので、3日連続でも彼女にとってはむしろご褒美です(笑) (2016年8月1日 19時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:頂志桜 | 作成日時:2016年7月20日 7時

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