大切なことは話せないまま ページ39
俺とAしかいない無音の空間に、冷たい空気が流れこむ。
今なら……。
「なあ、A。お前、強くなりたいか？」
「もちろんです。今さらどうしたんですか？」
Aが目を輝かせて言う。迷いのない、まっすぐな瞳。
『強くなりたい』想いは俺も同じ。
なのに、どうしてこんなにも俺とAは違うんだ？
Aは俺よりも輝いている。パワーが溢れている。
きっと俺はくすんでしまっている。どこかで道を踏み間違えたのだ。
だから俺はお前をもっと強くしたい。
俺に持っていないものを持っているお前に、夢を抱いたから。
全て、話してしまおう。
隠していた左手をAに差し出す。
「……これはお前の脳波を人為的に操作する薬品だ。
これを使えば、お前は『最強』の脳波を手に入れることができる。強くなれる」
Aは興味深そうに、俺の手のひらに置かれたカプセル状の薬を見つめている。
「代表から、これを使うか否かは俺の判断だと言われた。
でも、代表は使いたいと思っている。俺は、代表の望みを叶えたい」
ごめん、A……。代表は俺の恩人なんだ。
「分かりました。じゃあさっさとやっちゃいましょう。
さっさと終わらせて、マノンちゃんとダイゴさんに早く会いに行きましょうよ」
何も知らないAは、笑顔でそう言った。
純粋なその言葉は、俺を深く傷つけた。
Aのその願いは、叶えられない……。
Aは何も知らないんだ。何も。
代表が去った後に、険しい顔をした研究員が放った緊迫感のある声が思い出される。
――『代表はああおっしゃいましたが、あの薬品は本当に危険なものなんです。
最悪の場合、植物状態になります。その確率は60パーセント。
そうならなくても、高確率でひどい頭痛、記憶の齟齬が起こります。
だから……被験者のことを思うのなら、正しい判断をしてください』
これを使えば、高確率でAの健康を害する。
当然といえば当然だ。脳を人為的に操作する訳なのだから。
「水、用意してきますね」
Aにそのことを伝えられないまま、Aは薬を飲む準備を始めてしまった。
これでいい。これでいいんだ。
自分の選択ミスだと思いたくなくて、これからするであろう自分の愚行を正当化する。
――アラン、お前は馬鹿か。
開き直る俺を、もう一人の俺が罵る。
――お前、Aのことが大切なんだろ？ なのにどうして、自ら壊そうとするんだ。
……うるさい。これでいいんだ。
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エビピラフ - すごくすっごく面白いです！！それに、キュンキュンしますね〜。これからも更新頑張って下さい！！！ (2016年8月8日 1時) (
レス) id: 44e702c603 (このIDを非表示/違反報告)
リオン(プロフ) - カレーオムライス…とてもおいしそ〜とても食べたくなってきました！ (2016年8月6日 11時) (レス) id: 6bba43ef19 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 良かった。アランは、主人公に薬を飲ませなかった。安心しました。((o(^∇^)o)) (2016年8月4日 5時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 駄目。飲んじゃ駄目。その薬を飲んでしまたら、主人公は、壊れてしまう。アラン止めて。 (2016年8月2日 20時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 黒乙女ありすさん» コメントありがとうございます！ 主人公の考えとしては、『本当に美味しいカレーなら、飽きなんてこない』ってことなので、3日連続でも彼女にとってはむしろご褒美です(笑) (2016年8月1日 19時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：頂志桜 | 作成日時：2016年7月20日 7時
