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多分、あの電話から過ぎた時間は20分くらい
奥から聴こえる有線放送を聴くでもなく聴いていたら、店のドアが開かれる音がした
「人がいる所に居ろって言ったよね」
先程の電話の声とは違い、少しばかり苛立たし気な声に横を向くと、いつもの冷静、クールな様子ではなく、ちょっと息を切らした宮舘涼太の姿
「用があった」
「本当、お前は」
乱暴な物言いなのに、何も言わずに羽織っていたダウンジャケットを私の膝に掛けてくる
自分の格好を見れば、部屋着にしているTシャツと半ズボンで、有り難くそのダウンジャケットに腕を通した
それを確かめた涼太は、私の隣のスツールに腰掛けた
ジーンズに包まれた脚がダラリと伸ばされる
再び沈黙の時間
洗濯機が回るゴンゴンっていう騒音と、有線放送から流れる陽気なラジオDJの声が場を支配する
分かってる
こういう時、涼太は何も聞いてこないことくらい
ただ、どこから話せばいいのかとか、何を聞いてもらいたいのかとかもよく分からず
洗濯機の上に表示される残り時間が刻々と過ぎていくだけ
「口紅がね、入ってたの。彼のポケットの中に」
「うん」
「まあね、どこかで物的証拠を求めている自分も居たから、漸く事は動いたって感じ」
「そっか」
涼太の香水の香りがするダウンジャケット越しに、その大きな手が背中をポンポンと優しく叩いた
「どうしよう、家に立てこもられたら」
「良いよ、俺の家においで」
この人は、どこまでも私に優しい
それが、従兄弟に向ける愛情ってものだけではないこと
彼って意外と分かりやすいから
「そのね、口紅で、洗面台の鏡に『ばかたれ』って描いてやった」
「何かのドラマみたいなことするね」
「うん、今思うと恥ずかしい」
二人しかいないコインランドリーの中に、ゆっくりと笑い声が流れる
そっと触れ合った肩にドキッとした
無防備さを見せるのはちょっと怖い
「口紅には縁がない」
私がそう言うと、横で柔らかく笑ってた涼太からふとその笑みが消える
「Aの中には、まだあいつが居るね」
涼太の声はどこか苦々しく、悲しそう
時は経っても刻銘に思い出す
あの笑い声だって
あの瞳だって
あの景色だって
どこか歪で、
一人の男の子を深く傷付けた罪は
いつまでも私が私を許せるはずない
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なむる。(プロフ) - 雪の王子様さん» 私が出した全ての作品に、本当に素敵なコメント下さって！！ありがとうございます^_^彼らの素敵な姿を描けたらな…頑張ります！ (2020年9月16日 7時) (
レス) id: 74f22f9e0f (このIDを非表示/違反報告)
雪の王子様 - さっくんでてきた！なんかすごい展開の予感…更新頑張ってください。 (2020年9月16日 2時) (レス) id: a501c8742d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なむる。 | 作成日時：2020年8月23日 23時
